研修や講習の修了をデジタル証明で出す際には、バッジが何の修了を表すのか、また、証明へ記載する内容を発行の前に決めておきましょう。発行の手続きに取りかかってから文言を考えると、講座名だけが並んだ証明になってしまいます。
文部科学省の「令和6年度 デジタル技術を活用した多様な生涯学習の学習履歴の活用に関する調査研究」の事業報告書(2025年)によると、修了証書をオープンバッジで発行することへの懸念として記載内容の作り方への不安を16団体中11団体が挙げたという結果でした。
懸念の中身は発行の操作ではなく、証明書へ何を記載するかにあります。発行の前に、証明へ載せる文言を用意する工程が必要です。
この記事では、オープンバッジを発行する前に決める記載内容と、バッジ1つが表す範囲の決め方を解説します。
目次
オープンバッジは紙の修了証と何が違うのか?
オープンバッジとは、国際的な技術標準に沿って発行されるデジタルの証明で、誰がいつどのような学びを行い、どの基準を満たしたのかを画像そのものに記録したものです。受け取った人は、専用のウォレットと呼ばれる保管先へ収めて管理します。
紙の修了証に印字される項目は、受講者の氏名と講座名と修了日にほぼ限られます。学んだ内容と修了の判定基準は、証書とは別に配られた案内文や規程を参照して初めて分かります。
文部科学省の事業報告書は、オープンバッジについて「いつ、誰が、どのような学びを行い基準を満たしたのかを証明する。」と記載しています。証明の中身が紙より増えるぶん、記載する文言を用意する作業が発行の前に必要です。
バッジ画像に埋め込む項目は発行前に決めておく
各項目の名称と説明、取得要件、そしてスキルのタグ情報と発行日は、発行の操作に取りかかる前に用意しておく必要があります。同じ事業報告書は、バッジ画像に埋め込まれる説明書きにこの5種類の項目などが含まれます。
名称は講座名をそのまま流用し、説明は講座の案内文を要約することで作成可能です。取得要件だけは、修了と判定した条件を運営の記録から拾い直す必要があります。
受講管理の表に出席回数と課題の提出状況が残っていれば、取得要件はその項目を集計し、並べ替えるだけで作成可能です。発行の直前に条件をリストアップせず、講座の内容を決めた時点で、取得要件を明確にしておく必要があります。
学位の証明と講座の修了証明は認証する粒度が違う
学位のような長期のコースを終えた証明と、講座1本を終えた証明では、認証する単位の細かさが違います。同じ仕組みで発行できるため、どちらの単位で出すのかを決めないまま作業を進めると、範囲の異なる証明が混ざってしまいます。
特定非営利活動法人全国検定振興機構の「オープンバッジの利活用に関する提言」(2022年12月)は、マイクロ・クレデンシャルを「学習内容をより詳細な単位に分け個別に認証した証」と記載しています。学位や国家資格の証明はマクロ・クレデンシャルにあたり、両者は対になる語として扱われます。
発行を検討する段階では、出したい証明がどちらにあたるのかを先に決めておくべきでしょう。範囲が定まらないまま画像や文言の作成へ進むと、名称の付け直しが後から発生してしまいます。
バッジ1つが表す範囲は科目単位かコース単位かで決める
バッジが証明する範囲は、科目ごとに出すか、コース全体で1つ出すかによって変わります。科目ごとに出す形では、受講者は途中まで終えた時点でも証明を受け取れます。運営の側には、科目の数だけ修了の判定と発行の作業が発生します。
コース全体で1つ出す形では、判定と発行は最後の1回で済みます。そのかわり、途中で受講をやめた人の学習は記録として残りません。
同じ提言書には、和歌山大学の例として、科目の修了時に発行する「科目バッジ」と、それを関連項目ごとに集約した「単位積み上げ型バッジ」が掲載されています。二段構えにすると、細かい証明と全体の証明を両方出すことが可能になります。
取得要件の欄には達成した内容が読み取れる文を書く
取得要件の欄は、そのバッジが証明する達成内容を説明する項目として仕様に明記されています。バッジを受け取った人が就職や社内の申請でバッジを見せたとき、担当者はこの欄を読んで、それが何を終えた証明なのかを判断します。
1EdTech Consortium の「Open Badges Specification v3.0」には、取得要件にあたる criteria の項目が置かれています。
その定義は「Standards or set of standards that describe the accomplishment demonstrated by the Achievement.」と記されています。
直訳すると「Achievement(達成した成果)によって実証された達成度を説明する基準、または基準の集合」、より自然な日本語にすると、 「その達成事項によって示された成果や達成度を評価するための基準」とされています。講座の名前をリストアップするだけでは、この項目が役目を果たしているとは言えません。
出席の回数や提出した課題、試験の合格点といった修了の判定に使った条件をこの欄へ記入しておけば、受け取った人はバッジ1枚で学びの中身まで理解できます。
説明の欄と取得要件の欄は書き分ける
説明の欄と取得要件の欄は、仕様の上で別々の項目として分かれています。同じ文を両方へ入れると、講座の紹介文だけが二度並ぶ、意味の薄い証明になってしまいます。
具体的には、説明欄には、達成した成果の内容や詳細を、取得要件の欄は資格・認定を取得するための達成基準を説明する文章といった具合に、書き分ける必要があります。
安全衛生の講習であれば、説明の欄には扱った作業と法令上の位置づけを書きます。取得要件の欄には、受講した科目と時間、修了の判定に使った試験の内容を記載します。読む相手が変わっても、どちらの欄を見ればよいのかが伝わります。
紙の証明書をいつまで並行して出すかを決める
紙とデジタルを並行して出す期間は、発行の前に決めておく必要があります。デジタルへ切り替えた日から紙をやめられるとは限らず、提出先の事情に左右されるためです。
先の事業報告書は、オープンバッジにメリットを感じないと答えた機関の回答として「現状では正式な証明の場で紙の提出を求められることも多く、紙とデジタルの二重運用が必要となるという点はデメリットと感じます。」を報告しています。二重運用そのものは避けにくく、期間を区切れるかどうかがより良い運用が出来るかどうかの分かれ目となります。
並行して出す間は、どちらを正として扱うのかもあわせて決めておきましょう。紙を基準にするなら、バッジは控えの位置づけになり、記載の食い違いが起きたとき、どちらが正しい情報となるかが明確になります。
有効期限として妥当な期間は受け取る側の使い方で割れている
有効期限に妥当な期間は、受け取った相手の確認の仕方によって回答が分かれています。発行元の都合だけで決められる項目ではありません。
文部科学省の「デジタル学修歴証明導入手引き」(2024年3月)によると、「有効期限を設定した場合に妥当と考える期間については意見が分かれた」とされています。
企業が証明書の確認に要する期間として1か月程度、偽造の防止という意味では3か月程度、在学生の成績や卒業見込の判定が半期で変わることから6か月から1年、といった回答が並んでいます。
期限を定めること自体に違和感があるという回答も、同じ手引きに掲載されています。証明書は発行した日の時点の情報を保証するもので、期限は受け取る側の判断に任せたいという考え方です。
発行後に無効にする場面はあらかじめ挙げておく
発行したあとに無効にする必要が生じる場面は、限られた場合として挙げられています。想定を先に書き出しておけば、実際に起きたときの手順を運用の規程へ落とし込むことが出来ます。
同じ手引きによると、データに誤りがあり修正が必要な場合や、申請者が誤って送信した場合に個人情報の流出を防げるとして、「あって困る機能ではない」という回答が挙がったとされています。証明すべき事実が事後に消えた場合を挙げた大学もありました。
いずれも、発行の記録が残っていなければ取り消す対象を特定できません。誰へどのバッジをいつ出したのかを控える台帳を発行の初回から用意しておくと、問題が起きたときの対応がスムーズになるでしょう。
バッジ画像に使える作りは規格の版によって違う
画像のサイズ制限や、画像を持たないバッジを出せるかどうかは、規格の版によって違います。デザインの検討に着手する前に、利用するサービスがどの版で発行するのかを確かめておくべきです。
一般財団法人オープンバッジ・ネットワークの「オープンバッジとは (3.0/2.0)」には、3.0の柔軟性として「バッジ画像についてのサイズ制限がなくなり、独自の証明書や画像無しでの発行も可能」と記されています。版が変われば、用意する画像の寸法も、画像を用意するかどうかも変わります。
研修教材と証明の文言は同じ言い方でそろえる
研修教材で使う語と証明に書く語が食い違っている場合、受け取った人は教材のどの部分に対する証明なのかを推測するほかありません。証明の名称だけを別の担当者が付けたとき、教材の単元名と証明の名称が違うことで、受け取った人が混乱することがあります。
教材の単元名が「配線の点検」で証明の名称が「保全基礎」になっている場合、名称だけを見た相手には、どの学習に対する証明なのかが伝わりにくくなります。受講者が転職先へバッジを見せた場面でも同じです。
単元名と証明の名称を同じ言い方でそろえておけば、受け取った人は教材のどこを終えた証明なのかを確かめられます。教材を改訂して単元名を変えたときは、証明の側の文言も同じ改訂の中で直します。混乱を招かない為にも、使う用語は教材と証明で同じ言い方にそろえることが望ましいでしょう。
研修教材と修了の記録づくりは大寳製版株式会社へご相談ください
オープンバッジを発行するときは、バッジ1つが表す範囲と、名称・説明・取得要件という記載内容を先に決めておくべきです。どちらも発行の操作ではなく、教材と講座の側にある情報を文章へ起こす作業です。
大寳製版株式会社は、1967年の設立から教材・学習参考図書の制作に携わってきた教材制作会社です。紙の教材とデジタル教材制作の両方を扱っています。
製造業向けのデジタルマニュアルの制作では、新人教育と外国人教育を対象に作業工程をアニメーションで見せ、注意点をポップアップで表示しました。教材の中で学習の区切りをどこに置くかという判断は、修了の判定条件を決めるときにも必要になります。
オープンバッジの発行そのものは、利用するサービスの提供元へご確認ください。修了の判定条件を教材の側へ書き出す作業や、教材と証明で文言をそろえる相談をお考えのご担当者様は、大寳製版株式会社へお問い合わせください。
よくある質問
- Q. オープンバッジの発行で最初に決めることは何ですか?
- A. バッジ1つが何の修了を表すのかという範囲です。科目ごとに出すのか、コース全体で1つ出すのかによって、修了を判定する回数と証明に書く名称が変わります。
- Q. 取得要件はどの程度まで具体的に書けばよいですか?
- A. 修了と判定した条件が読み取れるところまで書きます。出席の回数や、修了の判定に使った試験の内容など、達成した内容を後から確かめられる文にしておきましょう。
- Q. 紙の修了証はすぐにやめてよいですか?
- A. 正式な証明の場で紙の提出を求められる場面が残るため、並行して出す期間を区切る形が現実的です。どちらを正本として扱うのかもあわせて決めておきましょう。
- Q. 研修教材の制作とあわせて相談できますか?
- A. 教材の単元名と証明の名称をそろえる作業や、修了の判定条件を教材の側へ書き出す作業は、大寳製版株式会社へご相談いただけます。バッジの発行そのものは、利用するサービスの提供元へご確認ください。
※本コラムはAIツールを補助的に活用し、内容の最終確認・編集は担当者が行っています。必要に応じて公表資料・一次情報を確認のうえ掲載しています。