自治体や教育委員会が学校向けに発行する防災副読本は、県内で起きた災害や地域で起こり得る災害を児童が学ぶための教材です。
宮城県教育委員会によるみやぎ防災教育副読本「未来への絆」小学校版の改訂の発表(2026年3月11日)によると、同委員会は初版から10年以上が経過したことを受け、防災情報を最新のものに更新して震災を経験していない児童を対象とした内容に見直したとしています。
防災副読本は、県内で起きた災害の記録を学年の区分と教科の単元に合わせて掲載しておけば、学校が授業と家庭学習で活用できる地域の防災教材になります。本記事では、小学校の教育課程の基準と国の学校安全の計画が地域の災害をどう扱っているかをもとに、防災副読本に掲載する内容と冊子の分け方を解説します。
目次
防災副読本はなぜ地域の災害を扱うのか?
全国で用いられる教科書は、特定の県の災害を詳しく掲載できません。そのため、地域の災害を扱う授業の資料は、副読本のような地域の教材で補われます。
副読本の位置づけと活用の方法
副読本とは、教科書の内容を補うために授業で用いる教材のことです。
教育出版が内閣府の防災情報のページで解説した防災に関する教科書と副読本の資料によると、副読本は「教科書に準ずるもので、使用の有無・仕方については、各自治体・学校により異なる」とされています。
副読本の使用の有無と活用の方法は、自治体や学校によって異なります。用いるかどうかを学校が定める教材である以上、授業で用いる場面が分かる作りでなければ、副読本は手に取られにくくなってしまいます。
小学校4年の社会科で取り上げる災害
小学校の社会科では、第4学年で自然災害から人々を守る活動を学びます。
文部科学省の小学校学習指導要領(平成29年告示)では、第4学年の内容の取扱いで「地震災害,津波災害,風水害,火山災害,雪害などの中から,過去に県内で発生したものを選択して取り上げること」と定められています。
小学校4年の社会科では、過去に県内で発生した災害を選んで取り上げます。どの災害を取り上げるかは県ごとに異なるため、授業の資料も県ごとに用意する必要が生じます。
国の学校安全の計画が掲げる防災教育の方向性
学校の防災教育は、国の学校安全の計画にも位置づけられています。
内閣府の令和4年版防災白書によると、令和4年3月25日に閣議決定された第3次学校安全の推進に関する計画は、施策の基本的な方向性の一つに「地域の災害リスクを踏まえた実践的な防災教育・訓練を実施する」ことを掲げたとされています。
国の学校安全の計画は、地域の災害リスクを踏まえた防災教育を施策の方向性に掲げています。地域の災害リスクは学校の所在地によって異なり、全国共通の内容だけでは計画に沿った防災教育を行いにくくなります。
都道府県版の安全副読本に載る内容
安全副読本とは、防災を防犯や交通安全と一体にして扱う安全教育用の副読本です。
教育出版の同じ資料によると、安全教育には地域差があり、「安全副読本に関しては、都道府県版を発行して地域独自の災害対策事例を掲載しているものもある」とされています。
安全副読本は、都道府県版に分けることで地域独自の災害対策事例を掲載できます。全国版の副読本でも、地域の事例を掲載するために都道府県ごとに版を分けて発行されているものがあります。
県内で過去に起きた災害の掲載の仕方
過去の被害の記録が副読本にまとまっていれば、教員は授業ごとに新聞や行政の資料から県内の災害を探す手間を省けます。
千葉県が令和6年3月に作成した防災教育副読本「こども防災」の紹介資料によると、同副読本は千葉県内の資料を使用し、児童が防災を自分のこととして捉えやすくしていると説明されています。
そのため、県内で過去に起きた災害の被害と対応を副読本に掲載しておけば、教員は授業で取り上げる災害の資料を副読本から選べます。
防災副読本に県内の災害の記録を掲載しておけば、学校は地域の災害を扱う授業に副読本を活用できます。
冊子は学年でどう分けるのか?
学年によって教科で扱う災害の範囲も読める文章の難しさも異なります。1冊で全学年をまかなうと、どの学年にも合わない記述が混ざってしまいます。
小学校5年の社会科で扱う災害の範囲
小学校5年の社会科では、我が国の国土の自然環境と国民生活との関連を学ぶ中で自然災害を扱います。
小学校学習指導要領では、第5学年の内容の取扱いで「地震災害,津波災害,風水害,火山災害,雪害などを取り上げること」と規定されています。
小学校5年の社会科では、国土で起こる様々な自然災害を取り上げます。4年では県内の災害、5年では国土全体の災害と、同じ社会科でも学年によって扱う範囲が県から国土へ移ります。
発達段階を考慮した防災教育の手引き
防災教育の手引きの作成も、第3次学校安全の推進に関する計画に盛り込まれています。
令和4年版防災白書によると、同計画では全国全ての学校で実践的な防災教育や避難訓練を実施できるよう、「発達段階を考慮した防災教育の手引きを新たに作成し周知する」こととされています。
国の学校安全の計画では、発達段階を考慮した防災教育の手引きを作成することとされています。国の手引きが発達段階を考慮して作成される以上、それに沿って授業で用いる副読本も、学年によって教える内容と説明の仕方を変える前提に立つことになります。
学年の区分ごとに変える漢字の量と災害の範囲
低学年向けではひらがなを多くして身の回りの危険から説明し、高学年向けでは教科で学ぶ災害の仕組みまで扱うといった違いを冊子ごとに付けられます。
宮城県教育委員会の改訂版の発表によると、同委員会は小学校版を1・2年生用、3・4年生用、5・6年生用の3冊に区分して発行しました。3冊のうち1・2年生用と3・4年生用は、題名が「未来へのきずな」とひらがなで表記されています。
そのため、低学年と中学年と高学年で冊子を分けておけば、漢字の量や扱う災害の範囲を学年に合わせて変えられます。
学年の区分ごとに冊子を分けておけば、各学年で扱う災害の範囲と記述の難しさを揃えられます。
教科の単元と副読本の対応
防災教育のためだけに充てられる時間は限られます。副読本は教科の授業の中で活用できる作りであれば、用いられる場面が増えます。
理科の天気や川や土地の単元で扱う災害
災害を扱う教科は社会科に限られません。
小学校学習指導要領の理科では、指導計画の作成と内容の取扱いで「天気,川,土地などの指導に当たっては,災害に関する基礎的な理解が図られるようにすること」と定められています。
小学校の理科では、天気や川や土地の指導で災害に関する基礎的な理解を図ります。理科の単元にも災害を扱う場面があり、副読本の内容は社会科と理科の両方から参照されます。
防災教育に用いられる教科書と副読本
防災教育に用いられる教材は、教科書と副読本の両方にわたります。
教育出版の資料によると、「小学校や中学校の授業においては、社会や理科の教科書のほか、道徳用副読本、防犯や交通安全と一体となった安全副読本などを活用し、防災教育が行われている」とされています。
防災教育は、社会や理科の教科書と道徳や安全の副読本にまたがって行われています。防災教育を扱う教科が1つに定まっていないため、副読本は教科書とあわせて用いられる補助の教材として位置づけられます。
副読本の各章に添える教科と単元
対応する単元が記載されていれば、教員は年間の指導計画の中で副読本を用いる時間をあらかじめ定めておけます。
千葉県が公開した防災教育副読本「こども防災」の活用場面例・指導案例では、理科の第4学年「雨水の行方と地面の様子」や社会科の第4学年「自然災害から人々を守る活動」などの単元ごとに副読本のどのページを用いるかが整理されています。
そのため、副読本の各章に対応する教科と学年の単元を記載しておけば、教員は授業のどの場面で副読本を用いるかを選びやすくなります。
副読本の各章を教科の単元と対応させておけば、教員は理科や社会科の授業の中で副読本を活用できます。
家庭学習で用いるワークシートの内容
災害への備えは家庭ごとに異なり、授業の中だけでは自宅の備えまで確かめきれません。家庭へ持ち帰る教材があれば、授業で扱いきれない部分を補えます。
地域で起こり得る災害への備えを考える学習
小学校4年の社会科では、県内で過去に起きた災害とあわせて、これから起こり得る災害への備えも扱います。
小学校学習指導要領の第4学年の内容の取扱いには、「地域で起こり得る災害を想定し,日頃から必要な備えをするなど,自分たちにできることなどを考えたり選択・判断したりできるよう配慮すること」と記されています。
小学校4年の社会科では、地域で起こり得る災害を想定して自分たちにできる備えを考えられるよう配慮します。過去の災害を知ることに加えて、これから起こり得る災害に自分が何をするかを考える段階までが教材で扱う範囲に含まれます。
家族への聞き取りや家の備えを記入する欄
家族が過去に経験した災害や家にある備蓄を記入する作業を通して、副読本の内容が児童の家庭の状況と結びつきます。
千葉県の「こども防災」の紹介資料によると、同副読本には調べ学習や学級での話し合いに活用できるワークシートや、家族へのインタビューを行うワークシートが収録されていると説明されています。
そのため、家族への聞き取りや家の備えを記入する欄を設けておけば、児童は家庭で家族と備えを確かめられます。
家庭で取り組むワークシートを収録しておけば、児童は授業の外でも地域で起こり得る災害への備えを考えられます。
防災情報の更新とweb版の副読本
防災の情報は年月とともに更新されます。発行した時点の内容のまま副読本を用い続けると、授業で教える情報と実際の情報が食い違ってしまいます。
見直しで更新される防災情報
ハザードマップや避難の情報は、国や自治体の見直しによって更新されます。ハザードマップとは、浸水や土砂災害などのおそれがある区域を地図に表したものです。
副読本に掲載したハザードマップや避難の呼びかけの説明は、発行後に自治体の見直しがあれば古い内容になってしまいます。
web版で差し替えられる内容
学校の端末で読むweb版であれば、更新した内容を全校へ同時に届けられます。冊子の改訂版を配り直すまでの期間に古い情報が用いられる事態も避けられます。
宮城県教育委員会の発表によると、同委員会はこれまで冊子を各学校に配布して活用を促してきましたが、今回の改訂ではweb版に切り替えてタブレット等で活用できるようにしたとしています。
そのため、web版で制作しておけば、防災情報が更新されたときに冊子を刷り直さずに該当するページを差し替えられます。
副読本をweb版で制作しておけば、防災情報が更新されたときに冊子を配り直さずに内容を更新できます。
まとめ
防災副読本の企画では、掲載する災害を選ぶことに加えて、学年の分け方と教科の単元との対応、家庭での活用の方法と更新の方法をあわせて定めておけます。
防災副読本は、県内で起きた災害の記録を学年の区分と教科の単元に合わせて掲載しておけば、学校が授業と家庭学習で活用できる地域の防災教材になります。
防災副読本の制作と大寳製版株式会社の支援
大寳製版株式会社は、50年以上にわたり学習参考図書の制作に携わってきました。
子ども向けの学習用世界地図の改訂では、大寳製版株式会社がキッズレッスン 学習世界地図の中学年向けと高学年向けの組版・イラスト・図版の作成を担当しました。
大寳製版株式会社には、中学生向けの紙の社会教材を電子書籍の形でデジタル化した社会 デジタル整理ワークの制作実績もあります。学年ごとに分けた冊子の組版や、紙の副読本をweb版で配るための教材のデジタル化についてもご相談いただけます。
防災副読本や地域教材の制作は、大寳製版株式会社へご相談ください。
よくある質問
- Q. 防災副読本とはどのような教材ですか?
- A. 防災副読本とは、学校の防災教育で教科書とあわせて用いる補助の教材です。自治体や教育委員会が、県内で過去に起きた災害や地域で起こり得る災害を掲載して発行するものもあります。
- Q. 防災副読本は学年ごとに分けたほうがよいのですか?
- A. 小学校の社会科では4年で県内の災害を、5年で国土全体の災害を扱い、学年によって扱う範囲が異なります。低学年と中学年と高学年で冊子を分けておけば、漢字の量や扱う災害の範囲を学年に合わせて変えられます。
- Q. 防災副読本は冊子とweb版のどちらで制作すればよいですか?
- A. web版で制作しておけば、ハザードマップや避難の情報が更新されたときに冊子を刷り直さずに該当するページを差し替えられます。冊子で発行する場合は、内容を更新するたびに改訂版を配り直す必要があります。
- Q. 防災副読本の制作はどこに相談できますか?
- A. 学年ごとに分けた冊子の組版・図版の作成や、紙の副読本のデジタル化は、大寳製版株式会社へご相談ください。
※本コラムはAIツールを補助的に活用し、内容の最終確認・編集は担当者が行っています。必要に応じて公表資料・一次情報を確認のうえ掲載しています。