複式学級の授業では、教師が2つの学年を交互に受け持つため、児童生徒だけで学習を進める時間が毎時間のように生まれます。複式学級で使う教材は、教師が離れている時間に読まれることを前提に作られています。
2026年9月1日に認定NPO法人Teach For Japanが岐阜県山県市と結んだ連携協定の発表では、市内の9小学校と3中学校を統廃合せずに存続させ、合同授業や異年齢学習を組み合わせる構想が説明されています。
学校を統廃合せずに残す方針の下では、学級編制の基準に当てはまる小規模な学校で複式学級が置かれます。
本記事では、複式学級の授業がどのように進み、その授業で使う学習の手引きやワークシートがどのような形で作られているかを解説します。
目次
複式学級の授業はどのように進むのか?
複式学級とは、2つの学年の児童生徒を1つの学級として編制した学級です。担任は1人です。同じ教室にいる2つの学年に、それぞれの学年の内容を同じ時間に教えます。
複式学級の編制の基準
複式学級を置く人数の基準は法律で決まっています。公立義務教育諸学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律(第三条)によると、2つの学年の児童で編制する学級の標準は「十六人(第一学年の児童を含む学級にあつては、八人)」で、中学校では「八人」と定められています。
つまり、2つの学年を合わせて小学校で16人以下、1年生を含む場合と中学校では8人以下のときに複式学級が編制されます。人数の少ない学校ほど2つの学年が1つの教室で学ぶ形になります。
直接指導と間接指導の組み合わせ
複式学級の授業では、教師が2つの学年を交互に受け持ちます。栃木県教育委員会が2019年3月にまとめた複式学級担任の手引によると、「教師が一方の学年を指導している間、他の学年の児童は、自学自習の学習形態をとることになる」とされています。同じ手引は、前者を直接指導、後者を間接指導と呼び分けています。
これは、1人の教師が同じ時間に2つの学年へ別々の内容を教えるため、片方の学年は必ず教師なしで学習を続ける時間を持つということです。直接指導と間接指導は授業のなかで何度か交代し、児童生徒は教師がいる時間といない時間の両方を経験します。
学年ごとの指導段階のずらし方
2つの学年に同じ段階の学習を同時に進めさせると、教師は両方の学年の説明を同時に求められます。愛媛県教育委員会が2019年度に整えた複式学級学習指導資料によると、「どうしても指導段階を学年別に『ずらした組合せ』が必要になる」とされています。
つまり、一方の学年が課題を把握している間にもう一方の学年は前の時間の続きを解くように指導の段階を学年ごとにずらして組み合わせます。教師はずらした段階の切れ目ごとに学年の間を移動し、その後で両学年の役割が交代します。
複式学級の授業は、直接指導と間接指導を交互に組んで進みます。
間接指導の時間に学習の進め方を伝えるもの
教師が別の学年を教えている間、児童生徒は次に何をするかを自分で判断しなければなりません。間接指導の時間に学習を止めないためには、進め方を児童生徒の手元にある教材から読み取れるようにしておく必要があります。
間接指導の時間の位置づけ
間接指導の時間は、児童生徒がただ待つだけの時間ではありません。
北海道教育大学へき地・小規模校教育研究センターが2021年3月に発行したへき地・複式・小規模教育の手引は、間接指導の位置付けとして「児童生徒の自主性を養う機会とする。」「学習技能を定着させ、児童生徒で主体的な学習や小集団での学習ができるようにする。」と掲載しています。
これは、間接指導が自主性を養い学習技能を定着させる時間として位置づけられているということです。教師がいない時間に自分で課題を解き、仲間と確かめ合う経験そのものが学習の一部になっています。
学習進行表とカードで渡す手順
児童生徒だけで授業を進める形として複式学級ではガイド学習が用いられます。ガイド学習とは、児童生徒の中から選ばれたガイド役が学習進行計画に沿って進める小集団学習です。
愛媛県教育委員会の複式学級指導用語集によると、ガイドは「教師の指導のもとに立てた学習進行計画によってリードしながら、共同で学習する」とされています。
そのため、学習の進め方はガイド役の児童生徒が読み上げられる学習進行表や、手順を1枚ずつ区切ったカードの形で渡します。教師が口頭で補えない時間には、進行表とカードが指示の役目を担います。
間接指導の時間の学習の進め方は、教師の口頭説明ではなく教材の側で伝えます。
間接指導の間の学習はどこで確かめるのか?
教師が片方の学年を教えている間、もう一方の学年が何をどこまで理解したかは、その場では見えません。複式学級では、間接指導の間の学習を児童生徒が書き残し、教師が後から見て確かめます。
わたりの指導で教師が観察しにくい場面
教師が学年の間を行き来する指導を複式学級ではわたりと呼びます。栃木県教育委員会の複式学級担任の手引によると、「間接指導の間、教師は児童の発言や行動の観察を行うことが難しくなり、その時の評価は、ノートやワークシートへの記述を基にした評価が有効となる場合が多くなる」とされています。
これは、わたりの指導では教師が間接指導中の児童の発言や行動を観察しにくいということです。教師が見ていない時間の学習は、児童が書き残したものを通してしか把握できません。
ワークシートに残す学習のまとめと確かめ
間接指導の終わりには、児童生徒が学んだことを自分で書き留める場面を置きます。
北海道教育大学のへき地・複式・小規模教育の手引に載っている学習リーダーによる授業の流れでは、まとめの段階でリーダーが「ワークシートに取り組んでください。」と呼びかけ、児童生徒が「確かめをワークシートに書く。」と並べられています。
つまり、学習のまとめと確かめはワークシートに書き込む形で残します。教師は次の直接指導で書き込みを見て、理解の程度と次に教える内容を決めます。
間接指導の間の学習は、ワークシートやノートの記述で確かめます。
学び方の段階に合わせた指示の細かさ
児童生徒だけで学習を進める力は、最初から備わっているものではありません。学年が上がるにつれて自分で計画を立てられるようになるため、教材に書く指示の細かさも学年の段階によって変わります。
6年間を見通した学び方の系統
間接指導で学習を進める力は、学校全体で段階を追って育てられます。北海道教育大学のへき地・複式・小規模教育の手引は、「6年間(中学校においては3年間)を見通した学び方の系統を明確にし、学校全体で取り組む必要があります。」と掲載しています。
これは、学び方が6年間を見通した系統として段階ごとに育てられるということです。同じ手引の表には、1・2年では授業中の約束を守って学習に取り組み、5・6年では自分から見通しをもって学習計画を立てる姿が段階ごとに並んでいます。
低学年で学習の約束を身につけ、高学年で計画を自分で立てるまでの道筋が学校ごとに決められています。
ガイド役の児童に求める姿の段階
ガイド役の児童に求める姿も、学年によって変わります。栃木県教育委員会の複式学級担任の手引の表では、低学年のガイド役は「学習進行表に従って進めることができる。」、高学年のガイド役は「話合いの内容を自分の言葉でまとめることができる。」姿として並べられています。
つまり、ガイド役に求める姿は低学年から高学年へ段階的に上がります。低学年向けの進行表は一つひとつの動作を短い文で区切り、高学年向けは話し合いの進め方や時間の配分をガイド役自身が決められる余地を残します。
児童生徒に渡す指示の細かさは、学び方の段階に合わせて変えます。
まとめ
複式学級の教材は、教師が離れている間接指導の時間に児童生徒だけで学習を進められるように作られます。進め方を伝える学習進行表やカードと、確かめを書き残すワークシートを学び方の段階に合わせて用意します。
教師が付いていなくても読み進められる手引きの作りは、複式学級に限らず自習用の教材にも通じます。大寳製版株式会社では、学年ごとに指示の細かさを変えた教材の組版と図版についてもご相談いただけます。
複式学級向けの学習の手引きとワークシートの制作は大寳製版株式会社へご相談ください
大寳製版株式会社は、愛知県春日井市の教材制作会社です。1967年の設立から教材・学習参考図書の制作を50年以上続けてきました(自社実績)。
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複式学級向けの学習進行表やワークシートの組版・図版、確かめの機能を持つデジタル教材制作については、大寳製版株式会社へご相談ください。
よくある質問
- Q. 複式学級とは何ですか?
- A. 2つの学年の児童生徒を1つの学級として編制した学級です。法律の標準では、小学校は16人以下(1年生を含む場合は8人以下)、中学校は8人以下のときに編制されます。
- Q. 間接指導の時間に児童生徒は何をしていますか?
- A. 教師が別の学年を直接指導している間に学習進行表やカードに沿って自分たちで課題を解き、小集団で確かめ合います。学習のまとめはワークシートに書き残し、教師は次の直接指導でその書き込みを見ます。
- Q. ガイド学習とは何ですか?
- A. 児童生徒の中から選ばれたガイド役が、教師の指導のもとで立てた学習進行計画に沿って小集団の学習を進める学習形態です。間接指導の時間の学習を充実させるために用いられています。
- Q. 複式学級向けの学習進行表やワークシートの制作は依頼できますか?
- A. 学年別の教材の組版・図版と、確かめの機能を持つデジタル教材の制作実績があります。複式学級向けの手引きやワークシートの作りについては、大寳製版株式会社へご相談ください。
※本コラムはAIツールを補助的に活用し、内容の最終確認・編集は担当者が行っています。必要に応じて公表資料・一次情報を確認のうえ掲載しています。