読み書きに困難のある学習者へ配る教材は、本文の文字を大きくするだけでは読みやすくなりません。文字の大きさと字体、字間と行間の空け方には公的な規格があり、音声を付けた形も別に用意されています。
エッジは、専門家8名が登壇する「読み書き支援ラボ」実践セミナー動画の期間限定配信(2026年8月31日)を告知し、2026年11月8日まで視聴できるとしています。教材の作り手が用意できる形として文字の大きさと音声化の選び方を解説します。
目次
読み書きに困難のある学習者とは?
読み書きに困難のある学習者とは、通常の検定教科書で一般的に使用される文字や図形等を認識することが困難な児童生徒です。文部科学省は音声教材に関するQ&Aで文字や図形等を認識することが困難な児童生徒を音声教材の届け先として説明しています(文部科学省が公表した音声教材に関するQ&A)。
読み書きの困難は、学習の内容を理解する力とは別に起こります。口頭で説明すれば分かる内容でも、紙面の文字をたどる段階で時間がかかり、問題文の最後まで届かないまま解答の時間が終わってしまいます。
音声教材の対象には日本語の理解が不十分な(もしくは日本語の通じない)児童生徒も含まれる
音声教材が届けられる相手は、発達障害等のある児童生徒に限られません。同じQ&Aには、肢体不自由等によりページめくりが困難な児童生徒と、日本語の理解が不十分な(もしくは日本語の通じない)児童生徒も対象として書かれています。
日本語を母語としない学習者は、漢字の読みで止まると本文の内容へ進めません。読みを音声で補えれば、文の意味をたどる作業に時間を使えます。
拡大教科書の標準的な規格が定める文字の大きさと字体
文字を大きくする幅と字体は、刷り上がりを見比べて決めるものではなく、規格の数値として定まっています。
本文の文字の大きさは、小学校3年までが26ポイント程度、それ以上の学年が22ポイント程度と定められています(文部科学省が公表した拡大教科書の標準的な規格)。基準の版から1.2倍に拡大した版と、0.8倍に縮小した版も作られます。
字体は、弱視の児童生徒が文字を見分けやすいよう、当分の間ゴシック体を標準とすると規格に記されています。規格では線の太さを中太とし、ルビや指数などの小さな文字は本文の文字の大きさの2分の1程度以上と定めています。
字間と行間の空け方も規格に書かれている
字間は文字詰めをしないことが原則とされ、行間はルビの付いていない場合で文字の大きさの2分の1程度以上と定められています。文字を大きくしても、字間と行間を詰めてしまえば読みやすくはなりません。
紙面の余白を惜しんで行を詰めると、行を追う目が次の行へ移るときに迷います。行間を確保しておけば、読んでいる行を見失わずに最後まで目で追えます。
マルチメディアデイジー教科書はテキストと音声をどう結び付けているのか?
マルチメディアデイジー教科書とは、通常の教科書と同じテキストと画像を使い、テキストに音声を同期させて読めるようにした教材です。読んでいる部分がハイライトされるため、どこを読んでいるかが分かると日本障害者リハビリテーション協会によるデイジー教科書の解説には書かれています。
紙面を組み替える方法との違いは、読む速さを学習者の側で決められる点にあります。一文ずつ音声を止めて確かめる読み方も、通して聞いてから細部へ戻る読み方も、同じデータで選べます。
文字の大きさや行間は学習者の手元で変えられる
音声教材には、文字のフォントや大きさの調整、行間の調整、反転表示などの機能が備わっていると文部科学省のQ&Aには書かれています。背景と文字の明暗を反転させると読みやすくなる学習者もいます。
紙で配る版は、組み上がった時点で文字の大きさが決まります。画面で配る版であれば、読みやすさの条件が一人ずつ違う学級へ一つのデータで届けられます。
拡大教科書や音声教材のもとになるデータはどう渡されるのか?
文字を大きくした版や音声を付けた版は、法律では教科用特定図書等という区分で扱われます。教科用特定図書等とは、障害のある児童生徒の学習のために、検定教科書に代えて使用できる図書や教材です。
教科用図書発行者は、文部科学大臣が指定する者を経由して、教科用特定図書等の発行者へデータを提供できます(文化庁が公表した教科用特定図書等普及促進法に伴う著作権法改正の解説)。データを提供できる根拠は、平成20年に施行された法律にあわせて著作権法へ加えられた規定です。
拡大以外の方式での複製も認められている
改正の前は、認められる複製の方式が拡大に限られていました。改正後は児童・生徒が使用するために必要な方式での複製も対象になり、音声教科書やマルチメディアデイジー図書を作れるようになったと文化庁は説明しています。
制作の相談を受ける立場では、元のデータをどの形式で受け取れるかが工程の見通しに関わります。組版データを渡せるのか、印刷用のPDFだけなのかで、組み替えにかかる手間が変わります。
文字を大きくすると1ページに載る分量が減る
本文の文字を22ポイントまで大きくした版では、原本の1ページ分が同じ判型の1ページに収まらなくなります。規格では、原本の本文や図・写真等を拡大しながら、概ね2〜3ページに収まるように配置するとされています。
ページ数が増えると冊子は厚くなり、分冊になる場合もあります。配る前に持ち運びと保管の条件を確かめておく必要があります。
版面が変われば、ページ番号も原本と一致しなくなります。教室で同じページを開いて進める授業では、原本のページ番号を併記しておけば、学習者と教員がどこを読んでいるかを突き合わせられます。
図版と本文の対応は版を作り替えても保つ
説明の文と図版が離れてしまうと、図を見るたびに本文のページへ戻る手間がかかります。ページをまたいで配置する場合は、図の番号と参照の文言を本文へ添えておきます。
配る前に実際の紙面で読み合わせる
画面で確認した紙面と、印刷して手元で見る紙面では、文字の太さと余白の見え方が変わります。刷り上がりに近い状態で読み合わせておけば、配った後では直せない箇所を先に見つけられます。
読み書きに配慮した教材の組み替えは大寳製版株式会社へご相談ください
読み書きに困難のある学習者へ配る教材では、規格に合わせて版を組み直すか、テキストと音声を同期させた形にするかを配る相手と使う場面から決めます。どちらの方法でも、元になる組版データと図版が整っていることが前提になります。
大寳製版株式会社は、1967年の設立から教材・学習参考図書の制作に50年以上携わってきた教材制作会社です。小学生向けの学習世界地図シリーズの改訂では、小学校中学年・高学年向けの組版とイラスト・図版の制作を担当しました。
紙面をそのまま画面で読める形にした例として中学生向けの社会教材を電子書籍にした社会 デジタル整理ワークがあります。読みやすさに配慮した版の組み替えや、デジタル教材制作についても大寳製版株式会社へご相談いただけます。
参考事例
よくある質問
- Q. 教材の文字を大きくすれば読みやすくなりますか?
- A. 文字の大きさだけでは足りません。字間を詰めないことと、行間を文字の大きさの2分の1程度以上空けることを合わせて確かめてください。
- Q. 音声を付けた教材と、文字を大きくした教材はどちらを用意すればよいですか?
- A. 配る相手と使う場面によって変わります。読む速さを学習者に合わせたい場合は音声と文字を同期させた形が向いており、紙で配る必要がある場合は版を組み直す方法を採ります。
- Q. 元の教材データがPDFしかない場合でも組み替えられますか?
- A. 組版データがある場合と比べて手間がかかります。大寳製版株式会社では、手元にあるデータの形式をふまえた進め方をご相談いただけます。
- Q. 紙の教材と画面で配る教材を同じ会社へ頼めますか?
- A. 大寳製版株式会社には、組版・図版の制作から電子書籍化までを手がけた実績があります。教材のデジタル化を含めてお問い合わせください。
※本コラムはAIツールを補助的に活用し、内容の最終確認・編集は担当者が行っています。必要に応じて公表資料・一次情報を確認のうえ掲載しています。