製品に添える取扱説明書をどの基準に合わせて作ればよいのかが、2026年の夏に改められました。取扱説明書の作成規格が新しいJISへ切り替わり、電気製品に限らず機械やサービスまでが同じ原則の対象になったためです。
パセイジが掲載したJIS Z 82079-1:2026制定の記事(2026年)は、2026年8月20日付で新しい規格が制定され、旧規格が廃止されたと伝えています。新しい規格は、国際規格IEC/IEEE 82079-1:2019を基に内容も構成も変えずに作られています。
本記事では、新しい規格が取扱説明書をどう捉え直しているのかと、作り手の技能を検定する制度で何が測られているのかを製造業で取扱説明書を作る・発注するご担当者様に向けて解説します。
目次
2026年8月に制定された取扱説明書の新しいJIS
取扱説明書の作り方を定める日本産業規格は、2026年8月20日にJIS Z 82079-1へ切り替わりました。旧規格は2006年に制定された電気・電子機器向けのもので、新しい規格の制定と同時に廃止されています。
基準が切り替わると、手元の説明書は作り直しの要否を新しい規格に照らして判定することになります。制定日より後に着手する説明書は、旧規格を根拠にできません。
日本規格協会のJIS Z 82079-1:2026の規格ページには、「この規格は,製品の使用情報に対する原則及び一般要求事項について規定する。」と記されています。
規格の名称にあるとおり、新しい規格が扱う対象は取扱説明書という冊子ではなく製品の使用情報です。使用情報とは、使用者へ渡す情報の全体で、冊子の取扱説明書に限らず製品や包装のラベルや画面上の表示も含む規格上の呼び名です。
新しいJISが取扱説明書として扱う範囲
新しい規格は、取扱説明書を1冊の文書ではなく製品の使用情報の全体として扱います。その範囲は、適用される製品の広さと、含める情報や工程の広さの両面で定められています。
冊子を1冊仕上げれば終わり、ではなくなります。製品に添える情報のうち、どれを冊子で渡し、どれをラベルや画面で渡すかを、作り始める前に確定します。
適用される製品の範囲は旧規格とどう違うのか?
旧規格が電気・電子機器の取扱説明書だけを対象にしていたのに対し、新しい規格は製品の種類を限定しません。機械や家電のほかにソフトウェアやサービスまでが同じ原則で作る対象です。
製品の種類で規格の適用を判断する必要がなくなり、扱う対象が機械でもソフトウェアでも同じ原則を当てはめられます。
産業機械の説明書を紙で配っていた会社も、業務ソフトの画面ヘルプを作る会社も、同じ原則に照らして中身を見直す対象になります。
使用情報を構成する3種類の情報と提供する媒体
使用情報は、製品の仕組みを理解するための概念の情報、操作の手順として従う情報、必要なときに引く参照の情報の3種類で構成されます。
情報を種類で分けると、種類ごとに向く媒体を特定できます。概念は読み通す冊子に、手順はその場で見る画面に、参照は探せる一覧に向きます。
規格のもとになったIECとIEEEが発行した82079-1:2019の序文では、使用情報は対象者が理解する必要のある概念の情報、従うか考慮する手順の情報、必要なときに参照する情報の3種類からなるとされています。
3種類の情報を1冊の冊子にまとめる必要はなく、製品本体のラベル、同梱の紙、ウェブサイト、動画といった複数の媒体に分けて提供できます。
産業機械なら、据え付けの手順は同梱の冊子に、日々の操作は機械の画面に、部品の型番一覧は検索できるウェブページに、という分け方がこの考え方に沿います。
使用情報が対象にする製品のライフサイクルの範囲
使用情報が扱う工程は、操作の説明だけにとどまりません。開梱から輸送、設置、操作、保管、点検・保守、廃棄までの製品の一生が対象です。
操作以外の工程は執筆者が製品に触れる機会が少なく、抜けやすい部分です。工程の一覧を先に立てておけば、記載されていない工程が見つかります。
操作の章は厚いのに、据え付け時の水平出しや、使用を終えた後の電池の外し方が記載されていない説明書は、この範囲を満たしていません。
読み手ごとに分けて用意する使用情報
使用情報は、製品に関わる人ごとに分けて用意します。誰が読むかによって必要な情報も渡す媒体も異なるためです。
読み手を定めると、その読み手が製品に触れる場面が定まり、記載する工程と省く工程を切り分けられます。読み手を定めずに作成した説明書は全員向けに全工程を載せるしかなく、誰にとっても探す文書になってしまいます。
使用情報を必要とする人は誰か?
使用情報は、熟練者か未熟練者かを問わず、その製品に初めて接する全ての人に必要です。
熟練者向けだからと説明を省く判断は成り立ちません。熟練者が知らないのは製品固有の事柄であり、そこが記載されていなければ経験は役に立ちません。
組み立て、設置、操作、保守、廃棄のどの場面でも、この前提は同じです。
ベテランの保守技術者でも初めての機種では点検口の位置を知らず、新入社員の作業者は電源の切り方から知る必要があります。
保守する人・操作する人・運ぶ人ごとの情報の分け方
同じ製品でも、保守する人、操作する人、運ぶ人では必要な情報が異なります。規格では、読み手ごとに別の情報製品が想定されています。
同じ製品の情報が複数の成果物へ分割されるため、制作の見積もりは1冊の分量ではなく、成果物の数と媒体で算出する形になります。
規格が挙げる例は、訓練を受けた保守技術者向けにウェブからダウンロードするPDFで提供する機械の保守情報、操作者向けに機械の画面に出す不具合対処の情報、運搬担当者向けに包装へ印刷するラベルです。
同じ機械でも、分解手順を読む人と、日々の操作で画面を見る人と、梱包を扱う人では、情報を受け取る場所が違います。
制作の前に決めておく読み手と媒体
取扱説明書は、誰にどの媒体で渡すかを定めてから執筆する必要があります。読み手と媒体が定まらないまま原稿を執筆すると、保守技術者向けの分解手順と操作者向けの日常操作が1冊に混ざり、どちらの読み手も自分に必要な箇所を探すことになってしまいます。
読み手と媒体は、原稿の章立てと表現の形式を定める前提です。後から変更すると、原稿の作り直しになってしまいます。
制作を外部へ依頼する場合も、読み手と媒体の組み合わせを最初に伝えておけば、制作会社は情報の種類ごとに媒体を割り当てた見積もりを提示できます。
取扱説明書の作り手の技能を検定する試験の内容
取扱説明書の作り手の技能は、文章の技術と制作を管理する技術の2段階で検定されています。
作り手に求める技術が文章と管理の2つに区分されるため、発注する側も、執筆できる人と工程を管理できる人を分けて確認する必要があります。
テクニカルコミュニケーター協会(JTCA)のテクニカルコミュニケーション技術検定試験のページでは、技術の到達度を全国共通の基準で検定し、技術の向上と人材の育成に役立てることが目的とされています。
同協会の試験結果ページによると、2026年夏の試験は7月26日に3級テクニカルライティング試験として実施され、327名が受験しました。合格発表は8月31日に発送されています。
3級試験が測る日本語の表記と文章の技術
3級のテクニカルライティング試験は、日本語の表記と文章の技術を測ります。
表記の統一は個人の癖ではなく技術として測られる対象であり、説明書の読みやすさは執筆者の日本語の運用に左右される部分が大きいものです。
3級の出題は、日本語の表記・文法・用字用語を含むスタイルガイドと、ライティング技術の理解度と到達度を対象にします。
出題範囲には対象の理解と文脈の組み立て、推敲とリライトも含まれ、同協会の日本語スタイルガイドが試験教材です。
ネジとねじが同じ説明書に混ざれば、読み手は別の部品かと迷ってしまいます。3級は、こうした表記の揺れをなくす技術を測る級です。
2級試験が測る制作管理と法令・規格への対応
2級の使用情報制作ディレクション試験は、文章そのものではなく制作の管理を測ります。
規格や法令の変化を制作工程へ反映するのは執筆者ではなく管理側の役目であり、基準が改められたときに見直す担当を定めておくことになります。
求められる水準は、制作管理・工程管理と使用説明の法令や規格に関わるマネジメント業務を遂行し、企画・構成、表現の方針、ツール活用やデータ管理といった基盤整備を支障なく行えることです。
出題範囲は5つの技術要素に分かれ、コンプライアンスと校閲も含まれます。
新しいJISのように基準が切り替わったとき、その内容を制作の工程へ反映させる役目は、この級が測る技術の範囲です。
まとめ:新しいJISのもとで取扱説明書を作るときに決めること
2026年のJISのもとでは、取扱説明書は使用者ごとの情報の集まりとして構成します。作り手には、読み手に合わせて文を作成する技術と、法令や規格を踏まえて制作の工程を管理する技術の両方が必要です。
制作に取りかかる前には、誰が読むかと、どの媒体で渡すかを定めておきましょう。読み手が定まれば扱う工程も絞られ、媒体が定まれば冊子・ラベル・画面・動画のどこに何を置くかを特定できます。
定める順序は読み手、媒体、工程の順で、前が定まらないと後を特定できません。
大寳製版株式会社は、教材・学習参考図書の制作で50年以上の実績を持ち、製造業向けのデジタルマニュアルも制作しています。
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大寳製版株式会社では、プラスチック成型会社向けのデジタルマニュアルを制作し、作業工程をアニメーションで視覚化して注意点をポップアップで表示しています。多言語対応により、新人や外国人の作業者が言語や経験を問わず読める作りです。
読み手ごとに媒体を分ける使用情報の考え方は、この事例のように操作者向けの手順をアニメーションで、注意点をポップアップで渡す作りに通じます。
取扱説明書やマニュアルを新しい規格に照らして作り直したい、紙の説明書をデジタルへ移したいとお考えのご担当者様は、大寳製版株式会社へご相談ください。
大寳製版株式会社の本社は愛知県春日井市にあります。設立は1967年で、デジタルコンテンツの制作は2017年に取り扱いを開始しました。教材制作会社として学習参考図書の組版から動画・3Dまでのデジタル教材制作に一気通貫で対応しています。
参考事例
よくある質問
- Q. 取扱説明書のJISは2026年に何が変わりましたか?
- A. 2026年8月20日にJIS Z 82079-1が制定され、電気・電子機器向けだった旧規格は廃止されました。新しい規格は全ての製品とサービスの使用情報を対象にし、国際規格IEC/IEEE 82079-1:2019と同じ内容です。
- Q. 使用情報とは取扱説明書のことですか?
- A. 冊子の取扱説明書は使用情報の一部です。使用情報は使用者へ渡す情報の全体で、製品や包装のラベル、画面上のヘルプ、動画も含みます。読み手ごとに媒体を分けて提供できます。
- Q. 取扱説明書の作り手に資格はありますか?
- A. テクニカルコミュニケーター協会(JTCA)のテクニカルコミュニケーション技術検定試験があります。3級は日本語の表記と文章の技術を、2級は制作管理や法令・規格への対応を測ります。
- Q. 紙の取扱説明書をデジタルマニュアルに移す相談はできますか?
- A. 大寳製版株式会社には、作業工程をアニメーションで視覚化し注意点をポップアップで表示するデジタルマニュアルの制作実績があります。読み手や媒体の分け方を含めてご相談ください。
※本コラムはAIツールを補助的に活用し、内容の最終確認・編集は担当者が行っています。必要に応じて公表資料・一次情報を確認のうえ掲載しています。