教科書に動画や音声が載るようになれば、教科書会社の依頼で動画やシミュレーションを作る会社にも検定の基準が関わってきます。どのような素材なら教科書に載せられるのかが、教科書検定の改善案として文書にまとめられました。
文部科学省は2026年9月2日の教科用図書検定調査審議会総括部会で教科書検定の改善に関する方向性(骨子案)を配付しています。本記事では、この骨子案に記載されたデジタルコンテンツの掲載の要件と、動画の総量の上限や申請時に提出する資料と検定後の訂正の反映時期を解説します。
目次
教科書に載せられるデジタルコンテンツはどこまでか?
教科書に載せる動画や音声を用意する前にその素材を授業のどの活動で用いるのかを定めておく必要があります。用途が確定しない素材は、教科書ではなく教材の側へ回すことになります。
制度の言葉では、教科書検定を通った部分だけが教科書にあたります。教科書検定とは、民間の発行者が編集した図書を国が審査し、教科書として適切かを判定する制度です。
デジタル部分に対する審査の考え方
動画や音声が教科書に含まれるようになっても、デジタルの部分だけに別の基準が用意されるわけではありません。紙面と同じ内容の適切さが最初に審査され、そのうえでデジタル固有の観点が加わります。
2026年9月4日のこどもとITの記事は、骨子案について「制度改正によって教科書がデジタルな形態を含むこととなった場合も、学習指導要領に基づいて指導するための『主たる教材』としての教科書の役割は変わらないとの考えを示した。」と報じています。
これは、デジタル部分も主たる教材としての教科書の役割は従来と同じものとして現行の検定基準で審査されるという整理です。作る側にとっては、紙面に求められてきた正確さがそのまま動画や音声にも求められることになります。
実験の手順を撮った動画であれば、映像の中の器具の扱いや説明の言葉が紙面の記述と同じ水準で審査の対象になります。
掲載の要件になる3つの条件
骨子案に記載された要件は、素材の出来のよさではなく授業での位置づけを判定するものです。現行の基準の要件に加えて求められる条件として記載されています。
2026年9月2日の教科書検定の改善に関する方向性(骨子案)には、「その教科の本質的理解の獲得に資するものであって、学習における活用目的及び活用方法が明確であり、原則として授業時数の中で当該コンテンツを活用した学習活動を行うことが想定されていること」を要件とする案が記載されています。
つまり、掲載の要件は教科の本質的理解に資すること・活用目的と方法が明確なこと・授業時数内での活用が想定されることの3点です。3点のどれも映像の画質や操作の滑らかさには触れておらず、その素材をどの単元のどの活動で用いるのかを説明できるかどうかで判定されます。
素材ごとに対応する単元と授業内の活動を先に定めてから制作に着手すれば、要件との対応を申請の段階で説明できます。骨子案には活用が考えられる例として図形やグラフを操作しながら学ぶシミュレーションや、実験や観察の器具の使用方法を解説する動画が挙げられています。いずれも授業の活動と一対一で結びつく素材です。
掲載が認められないと想定されるコンテンツの例
骨子案には、要件を満たさない例も並べられています。2026年9月4日の教育家庭新聞の記事は、「単なる文章の音読データや、生物や物質等の情報を網羅的に掲載した図鑑データ、娯楽要素の強いゲーム、授業自体を代替するような講義動画などの掲載は認めない方針だ。」と報じています。
これらは、文章の音読データ・網羅的な図鑑・娯楽性の強いゲーム・授業を代替する講義動画が掲載を認められない例として挙げられているということです。例に共通するのは、授業の活動と結びつかずに情報や娯楽を足すだけの素材である点にあります。
そのため、素材を絞る方向は量を増やす側ではなく授業の活動に対応させる側になります。全文の音読データや全種の図鑑は紙面の学習内容と無関係ではありませんが、授業の時間内での活用の仕方を説明できません。
教科書と教材の区分
教科書に載らない素材が不要になるわけではありません。学校側の意見でも、教科書に含める内容と教材へ回す内容を区分する考えが記載されています。
全国連合小学校長会が2026年8月21日付で提出した意見書には、教科書に含めるデジタルコンテンツは「学習目標の達成に直結する核心的な内容に絞り込み、単なる参考資料や補足的動画は「副教材・補助教材」として区分して扱うとすることが大切と考える」と記載されています。
これは、学習目標に直結しない参考資料や補足の動画が教科書ではなく教材として区分されるという整理です。教科書に載らなかった素材は、検定を受けない教材として別に作られることになります。
同じ単元の素材は、教科書の分と教材の分に分けて用意されることになります。同じ実験を扱う動画でも、器具の手順を解説する短い動画は教科書の側へ回し、背景の知識を補う長い動画は教材の側へ回すという分け方です。
教科書に載せられるデジタルコンテンツは、授業で用いる目的がはっきりしたものに限られます。
外部リンクの扱いと動画の総量の上限
デジタルコンテンツには、置き場所と分量の両方に枠が付きます。本文のどのページに対応する素材なのかと、その教科で用いられる動画の時間をどの単元へ割り当てるのかを制作の前に定めておく必要があります。
発行者が管理できるコンテンツへの限定
外部の資料へ誘導する作りは、教科書の部分では用いられなくなります。2026年9月2日の教育新聞の記事は、骨子案の内容について「外部ウェブサイトや教科書外の教材へのリンクは認めない。」と報じています。
つまり、掲載できるのは発行者が編修・管理できるコンテンツに限られ、外部サイトや教科書外の教材へのリンクは載せられません。必要な情報は、教科書の内側に自前の素材として用意することになります。
作る側にとっては、素材の権利と管理の責任を発行者の側で持てる形で制作するという条件が付きます。外部の動画配信サイト上の映像へ飛ばす作りや、公開されている資料へリンクで参照させる作りは、教科書の部分には採れません。
動画の上限時間と現行の二次元コード先の分量
動画の時間は、教科ごとの枠として配られます。文部科学省が2026年9月2日に配付した教科書検定の改善に関する方向性(骨子案)には、現行の二次元コード先に多種多様な動画が載っている現状を挙げたうえで「このような現状と課題を踏まえ、動画の総量の上限を定めることとしてはどうか。」と記載されています。
これは、動画が教科の特性を踏まえて教科・科目ごとの申請単位ごとに総量の上限時間を定められるという方向です。骨子案には、1点の教科書の二次元コード先に合計5時間を超える分量の動画を載せた例があることも記載されています。
技能の習得に動画が有効な教科・観察や実験を通して学ぶ教科・言語活動の充実に動画が向く教科・それ以外の教科という区分で枠の大きさが分けられる考え方です。
そのため、単元ごとに動画でなければ理解しにくい場面を選び、静止画と文章で足りる箇所は動画にしないという判断を先に行っておく必要があります。枠の中でどの場面に時間を配るのかが、単元の構成の一部になります。
動画1本あたりの長さに対する学校側の意見
総量の枠とは別に1本の長さについても学校側から意見が出ています。全国連合小学校長会の意見書(2026年8月21日)には、「そのため、動画等の時間は30 秒から1 分、長くても5 分以内にするなど動画の総量を制限することも考えたい。」と記載されています。
これは、小学校の校長会が動画1本を30秒から1分・長くても5分以内にして総量を制限する意見を出しているということです。意見書では、標準45分の1単位時間に収まる分量にする必要があるという理由が添えられています。
授業の1コマの中で再生し、その後の時間を観察や対話に回せる長さが求められています。1本を短く区切り、見せる箇所を絞った動画として制作することが前提になります。5分を超える映像を1本作るより、手順ごとに1分程度の映像を数本に分けるほうが、授業での用途を説明しやすくなります。
デジタル部分のページ区切り
置き場所の枠は、画面の単位にも及びます。教育家庭新聞の記事(2026年9月4日)は、「教科書の構成面では、デジタル部分もスクロールせずに画面内で一度に判読できる分量ごとにページを区切るよう求めた。」と報じています。
つまり、デジタル部分も画面内で一度に判読できる分量ごとにページが区切られます。教員と児童生徒が同じ箇所を特定できるように画面の単位を固定する考え方です。
スクロールで続く長い画面ではなく、1画面に収まる分量で紙面と同じように区切った構成が求められます。動画やシミュレーションを置く画面でも、どのページの学習内容に対応する素材なのかが画面の単位で判読できる必要があります。
デジタルコンテンツの置き場所と分量は、本文に合わせて枠が定められます。
検定の審査は何を対象にして何を提出させるのか?
審査は、機能の動作ではなく内容に向けられます。動作の完成度より先に映像と音声で述べる内容を文字で説明できるようにしておく必要があります。
動作確認の対象にならない機能
読み上げや拡大縮小のような機能は、検定では動作を確かめられません。教育新聞の記事(2026年9月2日)は、「音声読み上げや文字の拡大・縮小といった教科書の記述内容の変更を伴わない機能は、提出された機能の一覧を基に機能の有無・目的の確認にとどめ、動作確認までは行わない。」と報じています。
これは、読み上げ・拡大縮小などの機能は一覧を提出して有無と目的を確認するにとどまり、動作確認は行われないということです。機能が正しく動くかどうかは、発行者の側で確かめる事柄になります。
機能の一覧と目的を文書にまとめ、動作の検証は制作側の工程に含めておく必要があります。検定を通ったことは動作の保証ではないため、端末やブラウザごとの確認は納品の前に済ませておくことになります。
動画と音声のファイルとスクリプトの提出期限
映像や操作するコンテンツも、文字と画像で内容を説明した資料として提出されます。提出するものと期限は骨子案に記載されています。
2026年9月2日の教科書検定の改善に関する方向性(骨子案)には、「動画ファイルや音声ファイルとそのスクリプト、シミュレーションやプログラミング等の内容を詳細に説明する資料等」について申請書の提出から5週間程度の猶予を設ける案が記載されています。
つまり、動画・音声はファイルとスクリプトを提出し、シミュレーション等は内容を説明する資料を提出します。提出期限は申請書の提出から5週間程度の猶予を設ける案で、申請の直後に間に合わせるのではなく5週間の間に台本と説明資料を整える時間が見込まれています。
台本と画面の説明資料は制作物と一緒に作られることになり、映像だけを納めて終わる工程では足りなくなってしまいます。シミュレーションのように操作によって結果が異なるコンテンツでは、どの操作でどの結果が出るのかを文字と画像で網羅した資料が審査の材料になります。
検定意見が付いたときの修正表と差し替えの期限
修正は、まず文字の差分で審査されます。変更後のファイルは、文字の修正表より後に提出する手順が骨子案に記載されています。
2026年9月2日の教科書検定の改善に関する方向性(骨子案)には、「修正表にはスクリプトの原文とスクリプトの変更文、あるいは静止画と説明文による原案と変更案を記入して提出する」とし、変更後のファイルは修正表の提出から6〜7週間程度の猶予で提出する案が記載されています。
これは、検定意見が付いた場合の修正表はスクリプトの原文と変更文で提出し、差し替えのファイルは修正表から6〜7週間程度の猶予で提出するという手順です。映像の作り直しは、文字の修正の後に続きます。
台本の一文と映像の場面を対応づけて管理し、指摘された箇所だけを撮り直せる単位で制作しておけば、修正表と差し替えのファイルを短い期間で用意できます。1本の長い映像に手順をまとめて収めた場合は、一箇所の指摘が全体の撮り直しにつながりかねません。
検定の審査は、再生や動作の機能ではなく内容を対象にファイルとスクリプト・説明資料で行われます。
検定後の訂正の反映時期
デジタルの部分はいつでも差し替えられる技術がありますが、反映の時期は授業の区切りに合わせられます。訂正の内容と反映の時期を分けて管理し、どの版を児童生徒が見ているのかを追えるようにする運用が必要です。
誤記の訂正と統計の更新で異なる反映時期
訂正は種類によって扱いが区分されます。誤記や誤植の訂正は、承認が得られ次第に随時反映する扱いです。
教育新聞の記事(2026年9月2日)は、「ただし、統計資料の更新など、学習内容に影響のある訂正は、単元の途中で更新があると学習に影響が出る可能性があるため、長期休暇中の時期などに反映するようにする。」と報じています。
つまり、統計資料の更新など学習内容に影響する訂正の反映は、長期休暇中の時期に限られます。誤記の直しと内容の更新で扱いが区分されるため、訂正は種類ごとに分けて受け付ける必要があります。
内容の更新は、長期休暇の前にまとめて反映する段取りで運用されることになります。統計のグラフを差し替える動画やシミュレーションの数値は、学期の途中で更新せずに夏休みや冬休みの前に集約する運用になります。
更新履歴を確認できる形への要望
教員は、授業の計画を立てた時点の版を前提にしています。全国連合小学校長会の意見書(2026年8月21日)には、「訂正が行われた際には、何がいつ訂正されたのが分かるように「新旧対照表」等、更新履歴を教員が確認できるようすることも重要であると考える。」と記載されています。
これは、小学校の校長会が何をいつ訂正したのかを教員が確認できる更新履歴を求めているということです。訂正の反映と同時に以前の版との違いを教員が照合できる情報も届ける必要があります。
差し替えた箇所と時期を一覧にして渡すことが、更新を届けるときの前提になります。動画の一場面だけを差し替えた場合でも、どの場面の何が変更されたのかを文字で記録した一覧があれば、教員は授業の計画を見直す箇所を特定できます。
検定後の訂正はデジタル部分でも反映の時期が区切られ、更新の履歴を教員が確認できることが求められています。
まとめ
骨子案に記載された要件・上限・提出物・訂正の運用は、いずれも制作の後ではなく前に確定する事柄です。素材を集める前に授業での用途と本文との対応を確定させ、台本と分量の枠を持って制作に着手する必要があります。
教科書に載せるデジタルコンテンツは、授業での用途・本文との対応・分量・台本を先に定めてから作ることになります。教科書会社から動画やシミュレーションの制作を受ける教材制作会社にとっては、映像の出来のよさだけでは足りず、単元との対応と台本の管理が制作の前提になります。
大寳製版株式会社でも、この対応関係を確定させたうえで制作にあたることが、検定を見込んだデジタルコンテンツ制作の前提だと考えています。
教科書に載せるデジタルコンテンツの制作は大寳製版株式会社へご相談ください
大寳製版株式会社は、1967年に愛知県春日井市で設立し、学習参考図書の制作で50年以上の実績を持つ教育コンテンツ制作会社です。組版・図版・動画・3Dの制作までを社内で一気通貫に対応しています。
制作事例として紙の教科書をタブレット対応のデジタル教科書にリニューアルした大学向けの制作があります。3Dによる衣類の360度閲覧やチェック機能付きの縫製工程の確認など、紙面の学習内容に対応するデジタルの機能を実装しました。
また、中学生向け社会教材のデジタル化では、紙面をもとにした電子書籍に解答の表示切り替えなどの独自のデジタル要素を重ねる方法で教材のデジタル化を限られた予算の中で実現しました。
大寳製版株式会社では、教科書や教材に載せる動画や3Dを含むデジタル教材制作について単元との対応や台本の整え方を含めてご相談いただけます。検定への申請に用いる説明資料の形についても、あわせてお問い合わせください。
参考事例
よくある質問
- Q. 教科書検定の改善案では、どのようなデジタルコンテンツなら教科書に載せられますか?
- A. 2026年9月2日の骨子案では、教科の本質的理解に資すること・活用目的と方法が明確なこと・授業時数内での活用が想定されることの3点が要件として記載されています。文章の音読データ・網羅的な図鑑・娯楽性の強いゲーム・授業を代替する講義動画は認められない例です。
- Q. 教科書のデジタル部分から外部のサイトへリンクを張れますか?
- A. 骨子案では、掲載できるコンテンツは発行者が編修・管理できるものに限り、外部ウェブサイトや教科書外の教材へのリンクは認めない方向が記載されています。必要な情報は教科書の内側に自前の素材として用意することになります。
- Q. 動画の長さに制限はありますか?
- A. 骨子案では、教科の特性を踏まえて申請の単位ごとに動画の総量の上限時間を定める方向が記載されています。学校側からは、1本を30秒から1分で長くても5分以内にする意見も出されました。
- Q. 検定の申請では動画のファイルだけを提出すればよいですか?
- A. 骨子案では、動画や音声はファイルとスクリプトを提出し、シミュレーションなどは内容を詳細に説明する資料を提出する方向が記載されています。提出期限は申請書の提出から5週間程度の猶予を設ける案です。大寳製版株式会社には、台本や説明資料の整え方を含めたデジタル教材制作についてご相談いただけます。
- Q. 教科書に載せるデジタルコンテンツの制作を大寳製版株式会社に相談できますか?
- A. 大寳製版株式会社は、紙の教科書をタブレット対応のデジタル教科書にリニューアルした実績を持つ教育コンテンツ制作会社です。動画や3Dを含むコンテンツについて単元との対応や台本の整え方を含めてご相談いただけます。
※本コラムはAIツールを補助的に活用し、内容の最終確認・編集は担当者が行っています。必要に応じて公表資料・一次情報を確認のうえ掲載しています。