情報処理学会は2026年8月に高校教科「情報」シンポジウムの論文集を公開したと発表しています。2005年から2025年までの27回分がそろい、高校の教科「情報」をめぐる実践は20年以上にわたって積み重ねられてきました。
この記事では、高校の情報科向けにデジタル教材制作を進める前に決めておく2つのことを解説します。実習の環境をどこまで固定するかと、数年ごとの見直しでどこを差し替えるかです。
情報Ⅰの内容は4つの区分に分かれている
情報Ⅰとは、高校で全ての生徒が学ぶ共通必履修科目です。文部科学省が2018年に告示した高等学校学習指導要領の解説 情報編には、この科目で扱う内容として4つの区分が定められています。
区分は「情報社会の問題解決」「コミュニケーションと情報デザイン」「コンピュータとプログラミング」「情報通信ネットワークとデータの活用」です。教材が扱う範囲は、このどれにあたるかで決まります。
共通テストは知識だけでなく解く手順を問う
令和7年度(2025年度)の大学入学共通テストから情報が出題教科に加わりました。大学入試センターの問題作成方針には、情報Ⅰについて「問題の発見・解決に向けて探究する活動の過程」を重視すると記載されています。
これには、用語を覚えているかどうかだけでなく、身近な題材をもとに解き方を組み立てられるかを確かめる意義があります。教材でも、答えを覚えさせる設問と、手順を考えさせる設問の両方が必要です。
実習の環境は教材の側で固定しない
情報科の実習で使う道具は、言語も機材も進め方も学校の側で決まります。特定の環境を前提に組んだ教材は、その環境を持たない学校では実習に組み込めなくなってしまいます。
実習で使う機器とソフトは学校が選ぶ
学習指導要領解説 情報編の第3章では、実習について「内容のまとまりや学習活動,学校や生徒の実態に応じて,適切なソフトウェア,開発環境,プログラミング言語,外部装置などを選択すること」と定められています。
選ぶ主体は学校なので、教材制作会社が開発環境を1つに決めて配ると、この前提と噛み合わなくなってしまいます。 なので、教材は特定の環境によらずに組むか、環境ごとに版を分けて制作する必要があります。
共通テストのプログラム表記は特定の言語によらない
大学入試センターの問題作成方針には、プログラミングの問題について「授業で多様なプログラミング言語が利用される可能性がある」ため、受験者が初見でも理解できる独自の表記を用いると定められています。
出題する側も、言語が学校ごとに違うことを念頭に置いています。教材でも、特定の言語の書き方に寄りかからない説明を用意しておく必要があります。
プログラムの説明は言語ごとに版を分ける
文部科学省の「情報Ⅰ」教員研修用教材は、プログラミングを扱う第3章について他プログラミング言語版を本編とは別に公開しています。
同じ処理でも言語が変われば書き方が変わるため、1つの版を全ての学校へ配ることはできません。共通の解説と言語ごとのコードを分けて持てば、対応する言語が増えても差し替えだけで済ませられます。
学校の選択は用意できる環境の範囲で決まる
情報処理学会のデジタルプラクティスには、三重県の公立高等学校の回答として「モジュールを利用しやすいクラウド学習環境を見つけられなかったため、教室でのローカルPC環境を中心に実施していた」と掲載されています。
学校が選ぶといっても、手元にある環境の外からは選べません。通信環境や端末の制約を織り込まずに作った教材は、届いた先で使えなくなってしまいます。なので、制作の際には、学校によっては使えない環境があることを前提に組む必要があります。
学校は道具だけでなく教える順序も決める
同じデジタルプラクティスには、プログラミングの前段として「Excelの実習を取り入れ、関数の使用を通じて命令文に対する基礎を学ぶ」と掲載されています。表計算ソフトの関数を先に扱い、そのあとでプログラムへ進む組み立てです。
教材の側で順序を固定すると、学校が組んだ流れへ当てはめられなくなってしまいます。単元ごとに切り離して使えるようにしておけば、どの順序でも授業に組み込めます。
上記の通り、学校ごとに使える道具も順序も違うので教材は特定の環境に寄せずに組むことが必要です。
見直しの単位は更新の頻度で分けて決める
情報科の教材に限らず、学校教材は、作って配れば終わりではありません。用語も画面も数年で古くなるため、どこを差し替えるかを先に決めておく必要があります。更新の頻度が違うものを同じ冊子にまとめると、1か所の訂正で全体を組み直すことになってしまいます。
教材と教具は数年ごとに見直す前提で書かれている
学習指導要領解説 情報編には、用語や実習の課題が数年先には標準でなくなる可能性があるため「授業で扱う具体例,教材・教具などは適宜見直す必要がある」と記載されています。
改訂を例外として扱うと、そのたびに作り直しが発生してしまいます。教材を見直す前提で単位を分けておけば、差し替えや追加だけで対応できます。
解答とワークシートは本編と分けて持つ
文部科学省の「情報Ⅰ」教員研修用教材は、演習解答とワークシートを本編とは別に公開しています。
これも、単位ごとに区切る考え方と根本は同じです。演習の答えは設問を1つ直せば変わりますが、本編の解説はそのまま使えます。更新の頻度が違うものを分けて持てば、差し替えの範囲を演習の部分だけに収められます。
訂正は本体を直さず別紙で出す
同じ教員研修用教材では、訂正の内容を本体ではなく正誤表として配っています。
本体を組み直すと、版を重ねるほど作業が増えてしまいます。訂正を別紙で配る形にしておけば、配布済みの教材を回収せずに内容を正せます。
ソフトの画面を写した図版は数年で作り直しになる
画面の写しは、ソフトが更新されるとボタンの位置や名称が変わるため、本文が正しいままでも作り直しになってしまいます。図版は本文より先に古くなります。
画面に寄りかからない説明を本文へ置き、操作の画面は差し替えやすい単位に切っておけば、更新のたびに本文まで手を入れずに済みます。
上記の通り、項目を細かい単位ごとに分けることで、教材の保守と更新を効率的に行うことができます。
まとめ
高校の情報科向けにデジタル教材制作を進めるときは、実習の環境をどこまで固定するかと、見直しでどこを差し替えるかを着手の前に決めておく必要があります。実習の道具も順序も学校の側で決まるため、教材は特定の環境に寄せずに組むことになります。
2026年現在、教科「情報」の実践は20年以上の蓄積があり、公開された論文集から各校の進め方をたどれます。教材の形を決める前に届ける先の学校がどの環境を使っているのかを確かめておきましょう。
高校情報科の教材制作は大寳製版株式会社へご相談ください
大寳製版株式会社は、1967年の設立から50年以上にわたって学習参考図書の制作に携わってきた教材制作会社です。愛知県春日井市を拠点に紙面の組版から3Dコンテンツまで一貫して対応しています。
ブラウザ上で操作できる学習教材の制作実績もあります。e漢字ナビでは、書き順アニメーションとなぞり書きをUnityとHTMLで組み、複数の学年とスマートフォン・タブレットに対応させました。
情報科のように学校ごとに環境が違う教材では、差し替えの単位をどう切るかが運用の続けやすさを左右します。大寳製版株式会社では、教材のデジタル化から改訂の進め方まであわせてご相談を承っています。
参考事例
よくある質問
- Q. 高校の情報科向けの教材では、プログラミング言語をどれに決めればよいですか?
- A. 学習指導要領解説 情報編では、プログラミング言語を学校や生徒の実態に応じて選ぶと定められています。教材の側で1つに決めず、共通の解説と言語ごとのコードを分けて持つ形をおすすめします。
- Q. 教材の改訂はどのくらいの頻度で必要になりますか?
- A. 学習指導要領解説 情報編には、用語や実習の課題が数年先には標準でなくなる可能性があると記載されています。年数を一律に決めるのではなく、画面の写しや演習の解答など更新の頻度が高い部分を分けて持ち、必要になった箇所だけを差し替えるほうが現実的です。
- Q. 共通テストの情報Ⅰに対応した教材は、通常の教材と何が違いますか?
- A. 大学入試センターの問題作成方針では、探究する活動の過程を重視すると記載されています。用語を覚える設問だけでなく、身近な題材から解き方を組み立てる練習を含めておく必要があります。
- Q. 教材制作を外部へ依頼するときは何を伝えればよいですか?
- A. 授業で使う端末と通信環境、実習で使うソフトウェアとプログラミング言語、単元を教える順序をお知らせください。大寳製版株式会社では、この内容をうかがったうえでデジタル教材制作をご提案しています。
※本コラムはAIツールを補助的に活用し、内容の最終確認・編集は担当者が行っています。必要に応じて公表資料・一次情報を確認のうえ掲載しています。