東京都内の教職員に向けて、中学1年生から高校3年生を対象とする探究型のGX学習教材が2026年7月23日に無料公開されました。授業計画書・指導案・進行用スライド・資料動画・ワークシート・すごろくセットまでを一式にした構成です。
自治体が学習教材の配布元になる例が続いており、教材制作会社への発注内容も変わってきました。自治体が配る探究学習教材を、教材本体ではなく授業一式のパッケージとして作るべき理由を、制作側が押さえる要点とあわせて解説します。
自治体が配る教材には、教材会社が付ける指導用の手引きも、出版社の担当者による使い方の説明もありません。受け取った教員が自分で読み解いて授業に組み込めなければ、公開されたまま使われずに終わってしまいます。
使われずに終わる教材と授業に定着する教材の差は、中身の完成度ではなく渡し方に表れます。教材・学習参考図書の制作に50年以上携わってきた大寳製版株式会社が、紙と画面の両方を扱う制作の現場から見てきた点です。
目次
自治体が配布する探究学習教材とは何か?
自治体が配布する探究学習教材とは、都道府県や市区町村などの自治体が制作費を負担し、域内の学校・教員へ無償で提供する学習支援コンテンツのことです。
教材の中身は、探究学習という授業の進め方に沿って組まれます。探究学習とは、生徒が自分で問いを立てて調べ、考えをまとめて発表するまでを一続きで行う学習の形を指します。決まった正解を教える授業と違い、教員が進行役を務める時間が長くなります。
東京都内の教職員へ配られた教材が題材にしたのはGX教育です。GX教育とは、脱炭素社会への移行を意味するグリーントランスフォーメーションを題材に、エネルギーや資源の使い方を生徒に考えさせる学習分野です。産業構造の変化を扱うため、教科をまたいだ探究の題材に選ばれています。
ICT教育ニュースが報じたTOKYO GX ACTIONによる探究型GX学習教材の無料公開(2026年)では、授業計画書から指導案、進行用スライド、資料動画、ワークシート、すごろくセットまでが同じパッケージに収められています。
教材そのものよりも、授業をどう回すかを示す部材のほうが点数として多い構成です。自治体が配る教材が何を届けようとしているのかが、部材の内訳に表れています。
学校が採用する教材と自治体が配る教材は何が違うか?
いちばんの違いは、その教材を使うかどうかを誰が決めるかにあります。学校が採用する教材は年度初めの選定で使用が決まり、生徒の人数分が手元に届きます。
自治体が配る教材は、教員が公開ページを見つけて中身を確かめ、自分の授業に入れると判断するまで、一度も教室に登場しません。使用の義務がないため、配布したという事実だけが残る状態にもなりえます。
サポートの体制も異なります。学校採用の教材であれば出版社の担当者が使い方を説明に来ますが、自治体の無償公開では問い合わせ先が事務局のメールアドレスひとつという例もあります。
改訂の責任者が置かれにくい点も、学校採用の教材との差になります。年度ごとの改訂が制度に組み込まれている教材と違い、無償公開の教材は公開した時点で担当者の手を離れてしまいがちです。
教員が単独で使える形に整えるべき理由
自治体が配る探究学習教材は、教材本体だけでなく授業の進め方まで含めて作る必要があります。使うかどうかを決めるのが、教材を発注した自治体ではなく、初めてその教材を開く教員だからです。
教員が確かめたいのは、教材の完成度ではなく、自分の持ち時間に収まるかどうかです。1コマで扱える分量か、事前に印刷するものは何枚か、生徒に何を書かせるかが読み取れなければ、次の授業では使われません。
授業のコマ数に割り付けて渡す
探究学習は数コマから十数コマにわたるため、教材を通しの読み物として渡すと、教員が自分で分割し直す手間が生じます。
1コマごとに、その時間で何をどこまで進めるかを指導案の形で示しておけば、教員は年間の指導計画へそのまま差し込めます。TOKYO GX ACTIONの探究型GX学習教材が授業計画書と指導案を同梱しているのも同じ考え方です。
印刷して配る部材と画面に映す部材を分けて組む
ワークシートは生徒が書き込むため印刷を前提に、進行用スライドは教室の大型提示装置に映すため画面を前提に組みます。同じ図版でも、確認すべき条件が変わります。
A4のモノクロ印刷で細線や網掛けが潰れないかを見るのがワークシート、教室の後方席から読める文字サイズかを見るのがスライドです。GIGAスクール構想で1人1台端末が入った教室でも、書き込む作業は紙で残っている学校が少なくありません。
2026年現在、ワークシートと進行用スライドを1つのデータで兼用しようとして、どちらでも読みにくい紙面になってしまう例をよく見かけます。教材のデジタル化を検討する場合も、印刷用と画面用で版を分けたほうが結果的に手戻りが減ります。
地域の数値は差し替えを前提に組む
自治体が配る教材は、域内の統計や施設名といった地域の資料を題材にします。エネルギー消費量や再生可能エネルギーの導入率のように、毎年更新される数値が本文と図版の両方に入ります。
更新される数値を図版に文字として焼き込まず、テキストとして差し替えられる作りにしておけば、翌年度の改訂が版の作り直しになりません。数年にわたって配り続ける教材ほど、改訂1回あたりの作業量の差が積み上がります。
無償公開の学習教材でよくある失敗
無償公開の教材が使われない原因は、中身の質より公開の仕方にあることがほとんどです。制作の終盤ではなく企画の段階で決めておけば防げる失敗が、いくつか繰り返されています。
一式をまとめて置くだけで終わる
制作した部材をZIPファイル1つにまとめて公開ページへ置くと、教員はダウンロードして解凍し、中身を1点ずつ開いて用途を推測することになります。
どのファイルをいつ使うのかが分からないまま、教員の作業は閲覧だけで終わってしまいます。部材の一覧と使う順番を1枚のPDFにして、パッケージの先頭に置くだけでも到達率は変わります。
公開後に更新する担当が決まっていない
制作費が単年度の予算で組まれると、公開した時点で案件が完了扱いになり、翌年度に数値を直す担当が残りません。
担当を決めたとしても、更新の作業そのものが負担として残ります。数値を図版に焼き込んだ教材では1か所の差し替えにも制作会社への再依頼と費用が要るため、年度替わりの繁忙と重なると後回しにされてしまいます。
毎年手を入れる箇所は、制作の段階で一覧にして納品物に加えておくと良いでしょう。
統計が古いまま置かれた教材は、気づいた教員から使われなくなり、授業では別の資料が探されます。発注の段階で翌年度以降に誰がどの範囲を差し替えるかまで取り決めておけば、更新の止まった教材が残り続ける事態を避けられます。
紙のワークシートと電子教材のレイアウトはどうそろえるか?
書き込むための紙のワークシートと、画面で読む電子教材では、必要なレイアウトが違います。紙と電子を同じ制作の中で仕上げれば、それぞれに合った形を取りながら、一式として見たときの一体感を保てます。
同じ手順をワークシートでは丸囲みの数字、進行用スライドでは色分けで示すと、生徒はどれとどれが対応するのかを確かめるところから始めます。教員が本題に入るまでの時間はその分だけ削られます。
大寳製版株式会社には、子ども向けの地図教材であるキッズレッスン 学習世界地図シリーズの改訂で、小学校の中学年・高学年に向けた組版・イラスト・図版作成を担当した実績があります。
紙で作った教材を画面へ移す作業にも同じ考え方が要ります。中学生向けの社会教材を紙面の見た目を残したまま電子書籍にした社会 デジタル整理ワークでは、ページをめくる感覚を保ちながら解答の表示を切り替える機能を組み込みました。
大寳製版株式会社は、紙の教材と電子の教材の両方を手がけてきた教材制作会社です。書き込むためのワークシートには紙に合ったレイアウトを、画面で読む教材には画面に合ったレイアウトを当てたうえで、一式として違和感のない形に仕上げられます。
自治体・教育委員会の学習支援コンテンツは大寳製版株式会社へ
自治体が配る探究学習教材は、教材本体ではなく授業一式のパッケージとして作ることで、初めて教室に届きます。教員が単独で読み解き、自分の持ち時間に割り付けられる形まで整えるのが制作側の仕事です。
大寳製版株式会社は1967年の設立以来、教材・学習参考図書の制作に50年以上携わってきた教材制作会社です。組版・イラスト・図版作成や教材のデジタル化にも制作実績があります。
探究学習の教材や学習支援コンテンツの制作をご検討中の自治体・教育委員会のご担当者様は、大寳製版株式会社へお気軽にお問い合わせください。デジタル教材制作や指導者用デジタルコンテンツについても、あわせてご相談いただけます。
参考事例
よくある質問
- Q. 自治体が配布する探究学習教材とは何ですか?
- A. 都道府県や市区町村などの自治体が制作費を負担し、域内の学校・教員へ無償で提供する学習支援コンテンツです。2026年7月にはTOKYO GX ACTIONが、中学1年生から高校3年生向けの探究型GX学習教材を東京都内の教職員に公開しています。
- Q. 学校が採用する教材と自治体が配る教材は何が違いますか?
- A. 使うかどうかを決める人が違います。学校採用の教材は年度初めの選定で使用が決まりますが、自治体が配る教材は教員が自分で見つけて選ぶまで教室に届きません。出版社の担当者による使い方の説明もないため、教材だけで進め方が伝わる必要があります。
- Q. 探究学習の教材はどのくらいの単位で区切って作ればよいですか?
- A. 1コマ単位で区切り、その時間に何をどこまで進めるかを指導案の形で添えます。通しの読み物として渡すと、教員が自分で分割し直す手間が生じ、年間の指導計画に差し込みにくくなります。
- Q. ワークシートと進行用スライドは同じデータで作れますか?
- A. 兼用すると、どちらでも読みにくい紙面になりやすいため版を分けます。ワークシートはA4のモノクロ印刷で細線が潰れないか、スライドは教室の後方席から読める文字サイズかという別々の条件で確認します。
- Q. 地域の統計を扱う教材で、翌年度の改訂を軽くする方法はありますか?
- A. 毎年更新される数値を図版に文字として焼き込まず、テキストとして差し替えられる作りにしておきます。数年にわたって配り続ける教材ほど、版を作り直さずに済む差が大きくなります。
- Q. 無償公開の学習教材が使われないのはなぜですか?
- A. 部材をZIPファイル1つにまとめて置くだけで、どのファイルをいつ使うのかが伝わらない公開の仕方が主な原因です。部材の一覧と使う順番を1枚のPDFにまとめ、パッケージの先頭に置く方法で改善します。
- Q. 教材にすごろくやカードのようなアナログの教具を入れる意味はありますか?
- A. 生徒どうしの話し合いを起こしやすく、端末の準備が要らない点で意味があります。TOKYO GX ACTIONの探究型GX学習教材にも、進行用スライドや資料動画とあわせてすごろくセットが含まれています。
- Q. 自治体向けの学習支援コンテンツ制作はどこに相談すればよいですか?
- A. 紙のワークシートと画面用の資料を同じ体制で扱える教材制作会社が向いています。大寳製版株式会社は教材・学習参考図書の制作に50年以上携わってきた教材制作会社で、組版・図版作成や教材のデジタル化の実績があります。
※本コラムはAIツールを補助的に活用し、内容の最終確認・編集は担当者が行っています。必要に応じて公表資料・一次情報を確認のうえ掲載しています。