若手の技能訓練に用いる資料を探すとき、国が無償で公開している訓練資料は候補の一つになります。
厚生労働省が2026年3月17日に発表した2職種の動画公開のお知らせによると、同省は「3級技能検定の実技試験課題を用いた人材育成マニュアル」へ数値制御旋盤作業と冷凍空気調和機器施工作業の動画を追加しています。数値制御旋盤とは、加工の手順をプログラムで指定して自動で削る旋盤です。
本記事では、人材育成マニュアルが何を題材にどの段階の技能を扱う資料なのか、動画版とPDF版の対象の違い、社内の技能訓練に用いる前に確認する条件を解説します。
目次
技能検定の3級はどの受検者に向けた等級なのか?
技能検定とは、働くうえで必要とされる技能の程度を国が評価し、合格者に技能士の名称を認める国家検定です。試験は職種ごとに実施され、難易度に応じて特級や1級から3級などの等級に区分されています。
受講者が受ける等級は、教材で扱う技能の深さを判断する目安になります。初級相当の3級の課題を題材にした教材は、基本の作業を一通り身につける段階の訓練に対応します。
令和7年度の受検申請者が最も多い等級
技能検定の受検者数と合格者数は、年度ごとに集計されて公表されます。
厚生労働省が公表した令和7年度の技能検定の実施状況(2026年8月17日)によると、受検申請者は66万7,393人で、等級別では3級(初級相当)の21万9,186人が最も多いという結果でした。
つまり、令和7年度の技能検定で受検申請者が最も多い等級は、初級相当の3級です。受検者の層が最も厚い等級の課題を題材にした教材は、訓練を受ける人数が最も多い段階に向けられています。
機械保全技能検定で3級の受検に求められる実務経験年数
受検に必要な実務経験の年数は、職種と等級ごとに定められています。
機械保全技能検定を実施する日本プラントメンテナンス協会の試験要項によると、3級の受検に必要な実務経験年数は「0年(問わない)」と定められています。
つまり、機械保全技能検定の3級は、受検に必要な実務経験年数を問わない等級です。入社して間もない作業者も受検の対象に含まれるため、訓練を受け持つ側から見れば、3級の課題は経験の浅い受講者が最初に目標にできる題材になります。
3級技能検定は、実務経験の浅い受検者も受けられる初級相当の等級です。
3級の実技課題を題材にした国の訓練資料とは何か?
国は3級の実技課題を題材にした訓練資料として「3級技能検定の実技試験課題を用いた人材育成マニュアル」を公開しています。以下では人材育成マニュアルと記します。
公的機関が公開する訓練資料は、対象の等級と目的があらかじめ定められています。資料が何を題材にしてどの段階の技能を扱うのかを先に把握しておけば、自社の訓練のどの段階に当てはまるかを判断できます。
1つの実技課題に沿って並ぶ技能のポイントと作業手順
人材育成マニュアルは職種ごとに1冊ずつ作られ、目次は課題の概要、課題に含まれる技能、作業手順の順に並んでいます。
厚生労働省の人材育成マニュアル 数値制御旋盤作業編(2018年3月)では、「過去の技能検定3級実技試験で出題された課題を一つの事例として取り上げ、その実技課題に含まれる技能の内容、具体的な実施方法(作業手順)を記載している」と説明されています。
つまり、人材育成マニュアルは過去の3級実技課題を1つの事例として取り上げ、技能の内容と作業手順を記載した資料です。作業手順は写真と解説で並べられており、課題に必要な技能のポイントを先に読んでおけば、受講者は手順の意味を理解したうえで作業に取り掛かれます。
受検対策とは区別された資料の目的
過去の試験課題を題材にした資料であっても、受検対策の問題集とは目的が異なります。
厚生労働省の技能振興ポータルサイト「技のとびら」の人材育成マニュアルの案内では、同省がマニュアルについて「3級技能検定の実技試験問題を題材として取り上げ、初級レベルの技能の習得を目的に作成されています」と説明しています。
そのため、人材育成マニュアルは3級の実技試験に合格するための解説ではなく、初級レベルの技能の習得を目的にしています。訓練の目的が作業の習得にある場合、資料に掲載された課題は、基本の技能を一通り確かめる題材として用いられます。
人材育成マニュアルは、3級の実技課題を題材にして初級技能を指導するための資料です。
動画版とPDF版は対象と提供の形がどう違うのか?
同じ内容を動画と文書の両方で提供する資料では、それぞれが想定する場面が異なります。訓練に組み込む際は、受講者が自分で見る場面と指導者が手元で参照する場面を区分し、どちらの形式をどの場面に充てるかを定めておく必要があります。
動画版とPDF版それぞれが想定する利用者
人材育成マニュアルには、動画版とPDF版の2つの形式があります。
技のとびらの人材育成マニュアルの案内によると、「動画版については、自ら技能を学ぶ若年者、また PDF 版は、ものづくりマイスターや、工業高校、職業訓練施設等の教員・指導員の関係者など、幅広く活用いただくことを想定しています」とされています。
つまり、動画版は自ら技能を学ぶ若年者向けに、PDF版は指導者向けに作られています。PDF版が想定する指導者には、ものづくりマイスターや工業高校の教員が含まれます。
ものづくりマイスターとは、熟練した技能を持ち、企業や工業高校などで若年者に実技を指導する技能者です。社内の訓練でも、受講者が見る教材と指導者が参照する資料を分けて用意できます。受講者向けの動画は作業の流れを見せる役割を、指導者向けの文書は手順の根拠や確認点を記載する役割を持ちます。
職種ごとに複数のパートへ分割して提供される動画
動画版には、視聴の方法が2通り用意されています。
厚生労働省が2026年3月17日に発表した2職種の動画公開のお知らせによると、同省は「YouTubeで公開しているフルバージョンの動画をご視聴いただけるほか、分割した動画ファイル(mp4)をダウンロードいただけます」と説明しています。
つまり、動画は職種ごとに複数のパートへ分割され、フルバージョンの視聴と分割ファイルの入手ができます。通しで見る版と工程ごとに区切った版の両方があれば、訓練の場面に応じて見せ方を選べます。
受講者に全体の流れを最初に見せる場面では通しの版を用い、特定の工程を練習する場面では該当するパートだけを見せれば、動画を訓練の時間割に組み込めます。
訓練の期間と受講者の経験に応じた資料の用い方
公開されている資料は、各社の訓練の時間割に合わせて組まれたものではありません。
厚生労働省の人材育成マニュアル 数値制御旋盤作業編(2018年3月)の冒頭の説明では、「本マニュアルの利用にあたっては、訓練時間・訓練期間等を考慮の上、受講者の技能レベルに合わせて利用されることをお勧めする」と記載されています。
そのため、人材育成マニュアルは訓練時間と受講者の技能レベルに合わせて用いることが推奨されています。マニュアルの章のうち自社の訓練期間で扱える範囲と受講者の経験に応じて省ける章は、先に区分しておく必要があります。
動画版とPDF版は、対象と提供の形が区分されています。
社内の技能訓練に用いる前に確認する条件
外部の資料を社内の訓練に組み込む場合、自社の作業に当てはまる範囲と利用の条件は資料の側に記載されています。社内の訓練に組み込む前には、対象の職種があるか、自社の設備と手順が資料と一致しているか、複製や配布が許されているかを順に確認しておく必要があります。
PDF版が公開されている製造業と建設業の職種
PDF版は、製造業と建設業に区分して職種ごとに公開されています。
技のとびらの人材育成マニュアルの案内には、製造業として普通旋盤作業・数値制御旋盤作業・フライス盤作業の機械加工の3編と、機械検査、機械保全(電気系保全作業)、電子機器組立て、電気機器組立て(配電盤・制御盤組立て作業)の各編が掲載されています。
つまり、PDF版は製造業で7編、建設業で6編が職種ごとに公開されています。建設業の対象は、造園・建築大工・冷凍空気調和機器施工・左官・配管・塗装です。
自社の作業に対応する職種の資料があるかどうかが、社内の訓練に組み込めるかどうかの最初の分かれ目になります。対応する職種がない場合は、資料の構成だけを参考にして自社の作業に合わせた訓練教材を作る形になります。
特定の機種を例にした操作方法と自社の機械の取扱説明書
資料の写真や操作パネルは、撮影に用いられた機械のものです。
厚生労働省の人材育成マニュアル 数値制御旋盤作業編(2018年3月)の設備概要では、「本マニュアルでは特定の機種を用いて操作方法等の一例を紹介している」とされ、使用するNC旋盤の取扱説明書等で確認するよう求められています。
つまり、人材育成マニュアルの操作方法は特定の機種の一例であり、実際の操作は使用する機械の取扱説明書で確認することになります。資料の手順のうち機種に依存する部分は自社の設備の手順へ差し替え、差し替えた箇所を受講者に明示する必要があります。
資料の転載と配布に関する利用条件
国が無償で公開している資料でも、利用の範囲には条件が付いています。
技のとびらの人材育成マニュアルの案内では、掲載情報について「営利目的での引用、転載、複製、頒布等、二次利用することはできません」と定められています。
そのため、人材育成マニュアルは営利目的で引用・転載・複製・頒布するといった二次利用ができません。資料を社内の教材へ転載する形や販売する研修に組み込む形は、営利目的の二次利用の制限に触れる可能性があります。
資料をそのまま参照する範囲にとどめるのか、自社の教材として作り直すのかを利用条件に照らして判断しておく必要があります。
社内の技能訓練に用いる前には、対象の職種・自社の設備との違い・二次利用の条件を確認しておきましょう。
現場の作業手順を映像で見せる教材の制作は大寳製版株式会社へご相談ください
公開資料の職種に自社の作業が含まれない場合や、自社の設備に合わせた手順を映像で見せたい場合は、訓練教材を自社向けに作ることになります。
大寳製版株式会社は、教材・学習参考図書の制作で50年以上の実績を持つ教材制作会社です。
大寳製版株式会社には、プラスチック成型を手がける製造会社の依頼で作業工程をアニメーションで視覚化し、注意点やチェックポイントをポップアップで表示するデジタルマニュアルを制作した実績があります。
現場の作業手順を映像やアニメーションで見せる教材の制作をお考えのご担当者様は、大寳製版株式会社へご相談ください。
よくある質問
- Q. 技能検定の3級はどの程度の技能を対象にした等級ですか?
- A. 3級は初級に相当する等級です。機械保全技能検定のように受検に必要な実務経験年数を問わない職種もあり、入社して間もない作業者も受検の対象に含まれます。
- Q. 人材育成マニュアルの動画版とPDF版はどう区別して用いればよいですか?
- A. 動画版は自ら技能を学ぶ若年者向け、PDF版は指導者向けに作られています。受講者が作業の流れを見る場面では動画版を、指導者が手順の確認点を参照する場面ではPDF版を充てる形が考えられます。
- Q. 人材育成マニュアルは3級の受検対策の教材になりますか?
- A. 3級の実技試験に合格するための解説ではなく、初級レベルの技能の習得を目的にした資料です。過去の実技課題は、基本の技能を一通り確かめる題材として用いられています。
- Q. 人材育成マニュアルを社内研修の教材に転載してもよいですか?
- A. 営利目的での引用・転載・複製・頒布などの二次利用はできません。社内の訓練で参照する範囲にとどめるか、自社の教材として作り直すかを利用条件に照らして判断する必要があります。
※本コラムはAIツールを補助的に活用し、内容の最終確認・編集は担当者が行っています。必要に応じて公表資料・一次情報を確認のうえ掲載しています。