2026.09.17

理科のシミュレーション教材は授業のどこで使われるのか?観察・実験との分担と生徒が動かす条件の決め方を解説

2026.09.17
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理科のシミュレーション教材を単元に組み込む場合、実験の代わりに見せるのか、実験の理解を助ける道具にするのかで画面に載せる内容は変わります。

シミュレーション教材とは、理科で扱う光や天体などの現象をモデルにし、条件を変えながら動きを画面で見られる教材で、Webブラウザやアプリの形で配られるものです。

ICT教育ニュースが紹介した理科シミュレーション教材「理科Sim」の記事(2026年9月14日)によると、北海道の中学校教員が説明の伝わらなかった経験から118個の無料教材を作り、実験の前後で使う位置づけで公開しているとされています。

本記事では、学習指導要領の解説と学力調査の結果をもとに理科のシミュレーション教材が授業のどの場面で使われ、制作する際に何を決めるのかを解説します。

理科のシミュレーション教材は観察・実験とどう分担するのか?

理科のシミュレーション教材は、実験を置き換えるためではなく、実験の前後に生徒の考えを動かすために使われます。どの場面で使うかが決まれば、画面に載せる操作も絞れます。

学習指導要領解説がコンピュータに与えている位置づけ

中学校の理科でコンピュータをどう扱うかは、解説の中に位置づけが書かれています。

文部科学省の中学校学習指導要領解説 理科編(2017年)では、コンピュータや情報通信ネットワークを「観察,実験の代替としてではなく,自然を調べる活動を支援する有用な道具として位置付ける必要がある」と説明されています。

つまり、解説ではコンピュータが観察・実験の代替ではなく、自然を調べる活動を支援する道具と位置づけられています。制作の側から見れば、実験の手順を画面に写す作りではなく、実験で扱う条件を生徒が動かせる作りが求められます。

手引が挙げるシミュレーションの2つの用途

シミュレーションの使いどころは、大きく2つに分かれます。

文部科学省の教育の情報化に関する手引 追補版(2020年)には、シミュレーションなどのデジタル教材について「試行を容易に繰り返すことにより,学習課題への関心が高まり,理解を深めることができる」と書かれています。

つまり、手引が挙げるシミュレーションの用途は、試行の繰り返しによる理解と、通常では難しい実験の2つです。凸レンズの像のように実物で試せる現象でも、授業で実験できる回数には限りがあり、その足りない回数をシミュレーションが補います。

学力調査の報告書が挙げる実験前の見通しとモデルの試行錯誤

実験の前に何を確かめるのかをはっきりさせてから実験を行う学習は、学力調査の側からも求められています。

国立教育政策研究所の全国学力・学習状況調査 報告書 中学校理科(2025年)では、実験の前に結果から何が分かればよいのかを確認して共有する場面を設けることが指導改善の例として報告されています。

同じ報告書の粒子の領域には「1人1台端末を使用して原子や分子のモデルを動かし、生徒が試行錯誤できるようにすることが考えられる」という例も挙げられています。

つまり、報告書では、実験の前に結果から何が分かればよいかをはっきりさせる場面と、端末でモデルを動かして試行錯誤する場面の2つが指導改善の例に挙げられています。どちらの場面も、シミュレーション教材が受け持てる場面です。

実験の前と後のどちらで使うかの決め方

実験の前に使うのか後に使うのかを先に決めておけば、画面に載せる操作を絞れます。

ICT教育ニュースが紹介した理科シミュレーション教材「理科Sim」の記事(2026年9月14日)では、作者の中学校教員が実験前には結果を予想するために使い、「実験後には、『なぜこの結果になったのか』を条件を変えながら確かめるために使える」と説明したと伝えています。

そのため、教材は、実験前の予想と実験後の条件を変えた確認のどちらの場面で使うかを決めてから作る必要があります。予想の場面なら結果を隠して操作させる作りになり、確認の場面なら条件を並べて比べられる作りになります。

理科のシミュレーション教材は、観察・実験を置き換えるものではなく、その前後で使う道具として作る必要があります。

生徒が動かす条件と画面に出す変化はどう絞るのか?

生徒が動かせる値を増やすほど単元で見いださせたい関係は見えにくくなってしまいます。何を動かし、何を見せるかは、単元のねらいから決まります。

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凸レンズの単元で見いださせる関係

凸レンズの単元で生徒に見いださせる関係は、解説に具体的に書かれています。

文部科学省の中学校学習指導要領解説 理科編(2017年)には、凸レンズの働きについて「物体と凸レンズの距離を変え,実像や虚像ができる条件を調べさせ,像の位置や大きさ,像の向きについての規則性を定性的に見いだして理解させることがねらいである」と記載されています。

つまり、解説では、凸レンズの単元で物体の位置を変えて像の位置・大きさ・向きの規則性を定性的に見いださせることがねらいとされています。定量の式を扱わない単元なので、教材で数値を細かく出す必要はなく、物体を動かしたときに像がどこにどの向きでどの大きさに結ばれるかが見えれば足ります。

条件を自分で設定できるシミュレーションの適性

シミュレーションの性格は、条件を誰が決めるかによって変わります。

三重大学の研究紀要に載ったシミュレーション教材PhETの活用に関する論文(2018年)によると、開発者が設定した条件でのみ動くタイプより「条件統制された実験の結果などを探究的に扱うことができるタイプのシミュレーション、いわゆるインタラクティブ・シミュレーションが適している」と報告されています。

つまり、この研究では、開発者が決めた条件でしか動かないものより、児童生徒が条件設定を自ら行えるインタラクティブ・シミュレーションが適しているとされています。インタラクティブ・シミュレーションとは、見る側が値や配置を変えると、その場で結果が描き直される仕組みのシミュレーションです。

動きを眺めるだけのアニメーションでは、生徒は結果を受け取るだけで終わってしまいます。値を自分で変えられる作りにすれば、生徒が予想と結果のずれに気づけます。

学力調査に現れた条件の選び方の課題

変える条件を自分で選ぶ作業は、学力調査で課題として挙がっています。

国立教育政策研究所の全国学力・学習状況調査 報告書 中学校理科(2025年)では、エネルギーの領域について「音に関する知識を基に、変える条件に着目した実験を計画することに課題がある」と報告されています。

これは、変える条件に着目して実験を計画する段階に課題があるという報告です。教材の側で条件をあらかじめ絞っておけば、生徒はどの条件を動かすと何が変わるのかに集中できます。

操作する値と表示する量の絞り方

操作する値と表示する量は、対にして決めておきましょう。

凸レンズであれば、生徒が動かす値を物体の位置に限り、画面には像の位置・大きさ・向きだけを出せば、単元のねらいと画面の動きが一致します。

レンズの焦点距離まで自由に変えられる作りにすると、単元で扱わない条件が増え、どの操作が像の変化を生んだのかを生徒が追えなくなってしまいます。

生徒が動かす条件と画面に出す変化は、単元で見いださせる関係に合わせて絞る必要があります。

直接観察できない現象はどう見せるのか?

天体や地層のように実物を動かして試せない現象では、シミュレーションの役目が変わります。条件を動かす道具というより、人が立てない場所から見た姿を用意する道具になります。

天体の単元で求められる観察する位置の移動

天体の単元では、生徒が地上から見た動きを地球の外から見た動きとして捉え直す必要があります。

文部科学省の中学校学習指導要領解説 理科編(2017年)には、年周運動と公転について「観察者の視点(位置)を公転する地球の外に移動させて考えさせることが大切である」と記載され、続けてコンピュータシミュレーションで視覚的に捉えさせる工夫が挙げられています。

つまり、解説では天体の単元で観察者の位置を地球の外へ移して考えさせるためにコンピュータシミュレーションを用いる工夫が挙げられています。星座の位置を毎晩記録する観察は生徒にもできます。地球の外から見た図を画面で用意すれば、その記録を地球の公転と結びつけて考えられます。

実験や観察が行いにくい現象とモデルの役割

理科で扱う現象のすべてが、教室で再現できるわけではありません。

三重大学の研究紀要に載ったシミュレーション教材PhETの活用に関する論文(2018年)では、「理科で扱う諸現象の中には、時間的・空間的スケールが大きく、実験や観察が行いにくい現象(気団、地層の形成など)も含まれる」と書かれています。

これも、時間的・空間的スケールが大きく実験や観察が行いにくい現象にモデルが使われるという指摘です。長い年月をかけて進む変化は、時間を縮めて動かすモデルでなければ生徒に見せられません。

地上から見た動きと地球の外から見た動きの対応づけ

地上から見た動きと地球の外から見た動きは、同じ画面で対応づけて見せましょう。

南中高度の変化を例にすると、地上の観察者から見た太陽の高さと、地球の外から見た地軸の傾きを並べて動かせば、季節による高さの違いを生徒が自分で確かめられます。

直接観察できない現象は、観察する位置を移した表示で見せる必要があります。

理科のシミュレーション教材の制作は大寳製版株式会社へご相談ください

大寳製版株式会社は、理科のシミュレーションコンテンツを自社で制作し、サンプルとして公開しています。

学習参考図書の制作は1967年の設立から続けており、紙の教材で鍛えた図版と紙面の作りを教材のデジタル化にも生かしています。

公開しているサンプルには、ボタン操作で南中高度の変化を観察できるシミュレーターや、温度計を操作するとグラフとピストンの体積が変わるシャルルの法則の可視化コンテンツがあります。

理科の単元に合わせたシミュレーション教材の制作は、大寳製版株式会社へご相談ください。

参考事例

南中高度 制作実績を見る

理科

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シャルルの法則 制作実績を見る

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シャルルの法則

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キルヒホッフ第一法則

天体シュミレータ 制作実績を見る

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天体シュミレータ

よくある質問

Q. 理科のシミュレーション教材は実験の代わりになりますか?
A. 実験の代わりではありません。文部科学省の解説では、コンピュータが観察・実験の代替ではなく調べる活動を支援する道具と位置づけられています。実験の前に予想を立てる場面や、実験の後に条件を変えて確かめる場面で使うのが本来の役目です。
Q. シミュレーション教材で生徒が動かせる条件はいくつにすればよいですか?
A. 単元で変える条件に限るのが基本です。凸レンズなら物体の位置、天体なら日付や時刻のようにその単元で生徒に見いださせる関係に直接つながる条件だけを操作できるようにし、画面には見いださせる量の変化を出しましょう。
Q. 大寳製版株式会社に理科のシミュレーション教材を依頼できますか?
A. 大寳製版株式会社は、南中高度や天体のシミュレーションコンテンツを自社で制作して公開しています。単元に合わせた作りや、手元の紙教材とあわせたデジタル教材制作についてもご相談ください。

まとめ

理科のシミュレーション教材は、観察・実験の代わりではなく、実験の前に予想を立てさせ、実験の後に条件を変えて理由を確かめさせる道具です。

生徒が動かす条件と画面に出す変化は単元で見いださせる関係に合わせて絞り、直接観察できない現象では観察する位置を移した表示を用意しましょう。

単元と授業での使いどころに合わせたシミュレーション教材については、大寳製版株式会社へもご相談いただけます。

※本コラムはAIツールを補助的に活用し、内容の最終確認・編集は担当者が行っています。必要に応じて公表資料・一次情報を確認のうえ掲載しています。

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